シンガポールの暗号資産市場規模が拡大している。過去1年の市場規模は2840億ドル(約42兆6000億円)と前年から55.4%増加し、中部・東南アジア・オセアニア(CSAO)地域で最大の市場に返り咲いた。成長を支えたのは、機関投資家向け取引の拡大だった。
ブロックチェーン系メディアのCointelegraphが9月30日(現地時間)に伝えた。CSAO地域全体の市場規模が同期間に6.8%縮小する中、シンガポールは逆行高となった。
特に伸びが目立ったのは機関投資家向けプラットフォームだ。関連する活動規模は600億ドル(約9兆円)で、前年から94%増加した。取引はマーケットメイカー、店頭取引(OTC)業者、機関向けブローカーなど一部の事業者に集中した。
暗号資産分析企業のChainalysisは、新規サービスの増加よりも、既存プラットフォームでの大口取引が成長を主導したと分析した。
シンガポールは規制を強化する一方で、トークン化やステーブルコイン、デジタル資産決済を後押しする制度整備も進めてきた。2025年にはシンガポール通貨庁(MAS)が、海外顧客を相手にする国内の暗号資産企業に対し、免許取得か市場撤退かの対応を求めた。
StraitsXの最高経営責任者(CEO)、ティエンウェイ・リュー氏は、こうした措置によって投機的な活動が減少し、その結果、銀行や大企業を含む機関投資家がブロックチェーンを実運用で活用する市場構造が残ったと評価した。
トークン化と決済を巡る実証も進んでいる。MASの「BLOOM」プログラムは、規制下のステーブルコインやトークン化された銀行預金を活用した試験を支援している。
Rippleは3月、このプログラムに参加し、RLUSDを活用した越境貿易決済の実証を進める方針を示した。
一方、フィリピン、タイ、ベトナムでは、小口の個人間取引が目立った。3カ国の国内外P2P送金件数は、報告期間中に1万ドル未満の取引だけで540万件に達した。
これは世界全体の14.4%に相当する規模だが、3カ国が世界の暗号資産市場に占める比率は2.5%にとどまった。
3カ国の国内P2P送金では、5件中4件超が1000ドル未満だった。平均送金額は618ドル(約9万2700円)で、他地域平均の1210ドル(約18万1500円)を下回った。
フィリピンでは、暗号資産利用は送金と投資需要が中心だった。2025年の個人送金額は国内総生産(GDP)の8.5%水準に達した。
ベトナムでは海外取引所への依存度が高く、国内銀行口座の資金を暗号資産に振り替えるためのP2P取引需要が拡大した。タイでもステーブルコインの利用増加が続いた。
タイ証券取引委員会は9月、ステーブルコインの取引量と取引金額が大幅に増加し、とりわけTether(USDT)の利用が大きく伸びたと発表した。
ステーブルコインの利用は、国内取引よりも越境取引でより活発だった。調査対象となった全市場で越境取引の規模が国内取引を上回り、地域全体では国内取引の3.2倍に達した。
タイとベトナムの国内ステーブルコイン取引規模は、それぞれ104億ドル(約1兆5600億円)、69億ドル(約1兆350億円)だった。
このほか、フィリピンのIsland Bankは7月、海外送金コストと処理時間の削減を目的としたステーブルコイン決済のパイロット計画を公表した。シンガポールが機関投資家中心の市場として拡大する一方、東南アジアの一部では小口P2Pとステーブルコインを軸にした利用が広がっている。域内の暗号資産市場では、成長パターンの違いが一段と鮮明になってきた。