Geelyが2.2メガワット(MW)級の超急速充電器を中国5都市で稼働させた。公開から1週間足らずで実機展開に踏み切った格好で、中国のEV業界ではMW級充電インフラを巡る競争軸が、最大出力の高さから商用化の速さと普及規模へ移りつつある。一方、米国では高出力充電網の整備がなお鈍く、次世代設備の投入計画にも遅れが出ている。
EVメディアのElectrekが9月30日(現地時間)に報じたところによると、Geelyは杭州、上海、寧波、嘉興、西安の5都市で2.2MW級充電器の運用を始めた。年末までに充電拠点1万5000カ所を整備する計画も掲げている。
Geelyが公開した充電器は、5分以内の充電をうたう。もっとも、2.2MWの出力を1口でそのまま供給する方式ではない。システムは1500V・1500Aで動作し、2つの充電ヘッドに電力を分配する設計だという。
このため、現時点で1台の車両が2.2MWを単独で受け取る運用は想定しにくい。実際には、2台の車両にそれぞれ1MW超級の電力を供給する形に近い。それでも、乗用EV向けの充電インフラとしてMW級出力を商用環境に持ち込んだ点に意味があるとの見方が出ている。
Geelyが重視するのは、最大出力そのものよりも展開の速さだ。同社は今年3月に1.5MW級充電器を公開し、約6カ月で2.2MW級へ引き上げた。高出力充電によるバッテリー寿命への影響を抑えるため、「高度な熱制御アルゴリズム」も採用したとしている。
中国ではMW級充電インフラの拡大が続いている。現地EVメーカー各社は、5〜10分での充電を目標に高出力充電器を大規模に設置し、充電時間をさらに数秒単位で縮める競争にも踏み込んでいる。
BYDも展開速度で存在感を示している。3月に1.5MW級の充電システムを公開し、5カ月で充電器1万基を設置した。Geelyも同規模のインフラ拡大を進める構えだ。
Geelyは充電網の拡大に加え、バッテリー交換事業でも事業領域を広げている。中国のバッテリー交換サービス企業Nioのバッテリー交換事業部門の一部を買収したと発表した。
これに対し、米国では超急速充電インフラの立ち上がりが相対的に鈍い。350〜400kW級の充電器ですら広く普及していないなか、EVgoは750kW級充電システムを来年投入する計画だが、当初2026年下期とされていたスケジュールは2027年へ後ずれした。
EVgoの750kWシステムも、複数の充電区画で電力を分配する方式を採る。車両ごとの実効出力は、充電状況や車両性能によって変動する可能性がある。米国市場では、この水準の出力に対応できる乗用EV自体も限られるという。
Teslaも米国内でのMW級充電インフラ拡大に時間を要している。Teslaは2022年に最大500kW出力対応のV4スーパーチャージャーを公開したが、実際の設置までには約3年かかった。現在も、米国内のスーパーチャージャーの多くは350kW以下にとどまっている。
Tesla Semi向けのV4スーパーチャージャーは最大1.2MW級をサポートするが、乗用EV向けインフラとは用途が異なる。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は過去に、350kW以下の充電器を「子どものおもちゃ」と表現したこともある。
米国の充電インフラ拡大政策も不確定要因の1つだ。インフレ抑制法(IRA)とインフラ投資雇用法(IIJA)にはEV充電器の拡大支援が盛り込まれたが、連邦政府・州政府レベルの手続きや政策面の要因から、整備の進捗は当初の想定ほど伸びなかったとの指摘がある。
加えて、中国製EVに対する米国の関税や規制も重なり、中国で急速に進むEV・充電技術を米国の消費者が直接体験しにくい状況が続いている。
EV充電を巡る競争は、もはや「最大出力がいくらか」だけでは測れない。どれだけ早く設置し、実運用に乗せられるかが勝負を分ける段階に入った。中国勢が都市部や主要拠点でMW級充電器の配備を急ぐ一方、米国では次世代高出力充電の計画遅延が続いており、両国の整備スピードの差は一段と鮮明になっている。