米上院常設調査小委員会の民主党側は、イランおよび関連勢力に結び付く暗号資産ウォレットの多くで、Tetherのステーブルコイン「USDT」が使われていたとする報告書をまとめた。制裁または押収の対象となったウォレット846件を分析した結果、84%がUSDTを専ら、または主として利用していたとしている。一方、Tetherは米当局と連携して制裁対象ウォレットの凍結を進めており、ブロックチェーン上では資金追跡が可能だと強調している。
Decryptが9月30日(現地時間)に報じた。報告書の題名は「Tether Tied to Terrorism」。2021年6月から2026年8月までのブロックチェーン取引記録を基に、米財務省外国資産管理局(OFAC)とイスラエルの対テロ資金当局が指定したウォレットを分析した。
内訳を見ると、イスラエル側が指定した757件のウォレットのうち87%がUSDTを中心に取引していた。OFACが指定した101件では、57%がUSDTを主に使っていたという。
小委は取引規模の大きさにも言及した。報告書によると、イランの原油密輸業者とされたアリレザ・デラクシャンとアラシ・エスタキ・アリバンドは、2021年から2025年にかけてUSDTで6億300万ドル超を移動させた。小委は、このネットワークがHezbollahやフーシ、イランの金融機関とつながり、ドローンや軍事装備の取引にも使われた可能性があると指摘した。
リチャード・ブルーメンタル上院議員はCNBCのインタビューで、USDTがイランによる制裁逃れの「高速道路」になっていたと主張した。制裁回避にとどまらず、資金洗浄や違法取引にも利用されたとして、米財務省と司法省にTetherの調査を求めている。
報告書は、Tetherの制裁対応も主要な論点として取り上げた。小委は、2024年以前、対テロ当局が指定したウォレットを網羅的かつ継続的に凍結していなかったと主張。ある事例では、制裁対象に指定された後も3460万ドル相当の資金移動が続いたとしている。
また、TetherがOFAC制裁への対応を「自主的」と位置付け、独自にOFACのガイドラインに従ってきたとしている点も問題視した。小委はこれを、米金融機関に課される法的な制裁順守義務と対比している。
報告書はさらに、ハマスの資金調達手法が、過去のビットコインと複数トークンを併用する形から、USDT中心へと移行したとも指摘した。
ブルーメンタル議員は、スコット・ベセント財務長官とトッド・ブランチ司法長官に書簡を送り、Tetherのマネーロンダリング対策と制裁順守の実態を調べるよう要請した。暗号資産企業に対する政権の監督が、米国の国家安全保障上の利益を損なっているとも主張している。
報告書では、Tetherの主要投資家であるCantor Fitzgeraldとの関係にも触れた。小委はBloombergの3月の報道を引用し、ハワード・ラトニックの持ち分処分の過程で、Tetherが同氏の子どもによる持ち分取得を支援するため資金を貸し付けたとする内容を紹介した。
上院小委は6月、イラン関連取引の処理方法に関する資料の提出をTetherに求めた。小委によると、Tetherは要請を受けた事実自体は認めたものの、報告書公表時点まで回答していないという。
これに対しTetherは別の声明で、米当局との協力実績を前面に打ち出した。2026年に入ってから、イラン中央銀行と連携したウォレットに関連する約5億5000万ドルを凍結したとしている。内訳は、4月に3億4400万ドル超、7月に1億3000万ドル超だった。
Tetherは、67カ国の340超の機関と連携し、累計で49億ドル超の資産を凍結したとも発表した。パオロ・アルドイノCEOは、パブリックブロックチェーンは現金よりもはるかに高い水準の資金フローの可視性を当局に提供すると強調した。ただ、声明では上院報告書やその調査結果に直接言及しなかった。
米規制当局も、ステーブルコインが違法金融に使われるリスクを注視している。金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は5月の警報で、イランによるステーブルコイン活用手法の一つとして、大規模なステーブルコイン発行体の間での発行と移転を挙げた。
米財務省は8月、イランのデジタル資産分野で活動するあらゆる外国人を制裁対象にできるよう権限を拡大した。USDTを巡るイラン関連取引の問題は、個別ウォレットの資金移動にとどまらず、ステーブルコイン発行体の制裁順守責任や米当局の監督範囲へと論点が広がりつつある。