米エネルギー省は9月29日、戦略石油備蓄(SPR)から最大4000万バレルを交換方式で供給するための入札を公表した。市場では、実際の供給が始まる前の段階から、原油価格見通しの変化がインフレ期待や金利観測を通じて、ビットコインなどのリスク資産に波及する可能性に注目が集まっている。
入札の提案書提出期限は10月6日午前11時(米中部時間)。成立分の受け渡しは11月と12月を予定している。海外メディアのCryptoSlateなどによると、現時点で割当数量は確定していない。
今回の最大4000万バレルは、すでに発表されている米国の放出計画(合計1億7200万バレル)の範囲内にある。新たに1億7200万バレルを追加供給する意味ではなく、4000万バレルも、すでに市場に放出されている数量ではなく、今回の交換対象として示された上限だ。
市場の関心は、実際の供給時期そのものよりも、この措置が原油価格とインフレ見通しにどう影響するかに向いている。供給拡大観測が原油相場の見通しを動かせば、インフレ期待や米国債利回り、Fedの金融政策見通しを通じて、ビットコインなどのリスク資産に波及する可能性がある。ただ、現時点で公表されているデータだけで、今回の入札公表が原油価格や金利、ビットコイン相場に直接影響したと断定するのは難しい。
物価と金利を巡る環境は、今回の発表以前から続いていた。米商務省経済分析局は9月30日公表の8月の個人所得・支出統計で、個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比3.4%上昇したと明らかにした。食品とエネルギーを除くコアPCE物価指数の上昇率は3.0%だった。
もっとも、この統計は8月時点の物価動向を示すもので、9月29日のSPR入札公表や9月末の原油価格の動きは反映していない。このため、8月のPCEを今回の原油供給方針の影響と結び付けることはできない。
Fedは9月16日、政策金利の誘導目標レンジを0.25ポイント引き上げ、3.75~4.00%とした。当時も、インフレはなお高止まりしているとの認識を示していた。
原油需給も相場の変動要因となる。米エネルギー情報局(EIA)は9月の見通しで、世界的な原油在庫の減少と中東での供給障害を背景に、2026年下期のブレント原油価格が1バレル当たり平均90ドルになると予測した。見通しの前提データは9月3日時点で固まっており、今回の入札公表は織り込まれていない。
債券市場やビットコイン相場の動きも、今回の発表の影響を直接示す材料とまでは言い切れない。9月29日の米国債利回りは2年物が4.89%、10年物が5.26%。9月30日のビットコインは8万3000ドル前後で推移した。いずれも当時の市場環境を示す参考値であり、今回の公表による値動きと断定できるものではない。
次の焦点は10月6日の入札締め切りだ。どの程度の数量が実際に割り当てられるかによって、11~12月に供給される原油の規模が決まる。ビットコイン相場も、発表そのものより、実際の割当数量と、その後の原油価格、インフレ、金利見通しの変化を通じて影響を受ける可能性がある。