ボイスフィッシング被害の補償責任を巡り、通信業界が責任範囲の拡大に反発している。写真=Shutterstock

韓国の通信業界が、ボイスフィッシング被害に対する無過失補償責任を通信事業者にまで広げる動きに反発している。通信事業者は金融取引を管理しておらず、通話内容を任意に確認する権限もないことから、被害補償の責任主体に含めるのは適切でないとの立場だ。

韓国通信事業者連合会(KTOA)は9月30日、ボイスフィッシング被害が発生した場合に通信事業者にも無過失補償責任の分担を求める案に反対する考えを明らかにした。

国会では現在、ボイスフィッシングなど電気通信金融詐欺の被害が発生した際、過失の有無にかかわらず、被害金の全部または一部を金融機関が補償することを柱とする「通信詐欺被害還付法」改正案が審議されている。一部の金融業界からは、犯罪防止に通信事業者や捜査機関も関与している以上、補償責任も通信事業者が分担すべきだとの声が上がっている。

これに対しKTOAは、通信はボイスフィッシング犯罪の原因そのものではなく、情報を伝達する手段にすぎないと主張する。実際の送金や現金の引き出しは金融システム上で行われるものであり、通信網の欠陥や通信サービスの誤作動に起因する犯罪とは性格が異なるとしている。

また、通信事業者は利用者間でやり取りされる内容を生成・管理する立場になく、あくまで伝送を担うだけだと説明した。通信の秘密の保護により、通話やSMSの内容を事業者が任意に確認することもできない。KTOAは「通信事業者に無過失補償責任を課すことは、事実上、通話内容をリアルタイムで分析し、詐欺かどうかを判定する役割を求めるのに等しい」としている。

KTOAは、金融機関と通信事業者では法的な役割も異なると訴える。金融機関は電子金融取引法などに基づき、顧客資産の保護や取引の安全性確保、資金の流れや取引承認の管理を担う。一方、通信事業者の主な義務は、安定した通信サービスの提供と通信の秘密の保護だとしている。

海外の制度も根拠として挙げた。KTOAによると、英国は2024年10月に「APP(Authorised Push Payment)詐欺」に関する補償制度を導入したが、補償義務を負うのは金融機関に限られる。シンガポールの共同責任制度(SRF)でも、SMSフィッシングに限って金融機関と通信事業者に予防義務を課しており、責任が問われるのはその義務に違反した場合に限られるという。

その一方で、通信業界はボイスフィッシング対策そのものの責任を否定しているわけではないと強調する。通信各社は、未登録発信番号のリアルタイム遮断、国際電話の番号偽装の遮断、悪性URLのフィルタリング、AIベースのボイスフィッシング検知、犯罪利用回線の停止、携帯電話の開通時における顔認証などの対策を進めている。政府や金融業界との連携も今後さらに強化する方針だ。

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