日本の金融庁は、ステーブルコインを国際貿易決済に活用する実証事業を承認した。既存の決済分野に加え、貿易金融にまで検証対象を広げる取り組みで、「決済革新プロジェクト」での承認は4件目となる。
9月29日付のCryptopolitanによると、新たな実証は貿易プラットフォーム運営会社のTradeWaltzを軸に進める。TradeWaltzは、国際貿易書類をデジタル化するSaaS型プラットフォームを手がけており、これをステーブルコインの仕組みと連携させ、輸出債権の買取・決済を検証する。
貿易実務では、信用状や船荷証券などの紙書類がなお広く使われている。TradeWaltzは、こうした手続きが遅く、照合や郵送に多くを依存していると説明している。
実証では、まず輸出企業がTradeWaltzに船積み書類をアップロードする。その後、銀行が輸出債権の買取を承認した段階で、ステーブルコインによる決済を実行する流れだ。
現時点で対象となるのは、輸出企業と銀行の間における債権買取とその精算段階に限られる。輸入企業や輸入側銀行を含めた拡張については、次の段階で検討する余地があるという。
参加機関には、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行の3メガバンクが名を連ねた。三菱UFJ信託銀行のほか、4つの金融機関、NTTデータも加わる。
TradeWaltzは、参加金融機関が「決済トークン」を共同で検討すると明らかにした。これは、3メガバンクが別の実証で進めてきた共同ステーブルコイン構想と歩調を合わせる動きといえる。
今回の承認は、金融庁の「決済革新プロジェクト」における4件目の案件となる。2017年にフィンテック実証実験ハブを立ち上げて以降では、通算15件目の承認に当たる。
「決済革新プロジェクト」は2025年11月、決済分野に特化した枠組みとして新設された。ブロックチェーン、金融規制、海外動向に詳しい専門家が審査を担っている。
先行する実証も段階的に広がっている。第1号案件は2025年11月に承認され、3メガバンクによる共同の決済用ステーブルコイン発行計画を扱った。
第2号案件では、2026年2月に野村と大和が加わり、ブロックチェーン基盤での証券移転とステーブルコイン決済を検証した。第3号案件は2026年4月、Decurret DCPとGMOあおぞらネット銀行が、トークン化預金を用いた銀行間決済の実証として進めた。
市場や制度面では、今回の取り組みは日本のデジタル資産政策の変化とも連動する。金融庁は2026年8月、暗号資産とステーブルコインを担当する専任部署を新設した。暗号資産を金融商品として再分類し、最高税率を引き下げる計画の一環とされる。
信託型の円建てステーブルコインについては、2027年3月終了の会計年度内に実際の商取引で利用が始まる見通しだ。
金融庁は、今回の実証終了後、他の「決済革新プロジェクト」と同様に、コンプライアンスや監督面での結果を公表する方針としている。終了時期は定めておらず、実証はまず2026年9月から進める。
参加機関は今後のロードマップも示した。電子船荷証券やスマートコントラクト基盤のエスクローサービスを導入し、より多くの貿易手続きをオンチェーン化する構想だ。今回の実証は、単なる決済手段の検証にとどまらず、貿易書類処理と銀行間精算の自動化まで視野に入れた段階へ進む見込みとなっている。