写真=Access Partnership。分散型AIは、韓国のフィジカルAI競争力の強化と社会の安定に不可欠だと報告書は指摘した。

Access Partnershipは30日、分散型AIが産業・介護分野の人手不足対策や、輸出向け機器の付加価値向上に有効だとする報告書を公表した。産業、介護、輸出向け機器の3分野を合わせた経済価値は、2035年に年間500億ドル(約7兆5000億円)を超えると試算している。

分散型AIは、クラウド、エッジ、オンデバイス、オンプレミスといった複数の計算環境を連携させ、遅延、個人情報保護、エネルギー効率、コストなどの条件に応じて最適な場所でAI処理を実行する仕組みを指す。報告書では、とりわけ人手不足が深刻化する現場で価値を発揮すると位置付けた。

報告書は、韓国の構造的課題として人口減少と労働力不足を挙げた。2050年には人口の約40%が高齢層になる見通しで、産業現場ではすでに人材不足が顕在化していると指摘。半導体産業だけでも、2031年までに必要人材の約18%が不足すると推計した。

こうした状況下では、人手を確保しにくい業務を機械が代替するには、中央の指示を待たず現場で即時に判断できることが前提になる。AIの処理基盤がデータセンターの外へ広がり、ロボットや自動車、製造設備などが現実空間で判断・動作するフィジカルAIへと拡張するなか、その重要性は一段と高まっているという。

特に産業用ロボットや安全に直結する設備では、短時間でリアルタイムに判断し、対応することが求められる。判断のたびに中央データセンターの応答を待つ方式では限界があり、生産データが外部サーバーを経由することでサイバーセキュリティ上のリスクも高まると分析した。

その解決策として、Access Partnershipは分散型AIの活用を挙げる。大規模な計算はクラウドが担い、即時性が必要な処理は現場に近いエッジや端末側で実行する構成とすることで、各タスクを最適な場所に振り分けられるとした。

人手不足の補完が期待される用途は、産業分野に集中している。報告書は、産業・建設ロボット、危険作業向けヒューマノイドロボット、自律点検ロボット、予知保全などを代表例に挙げた。危険で人が入りにくい作業や、人材確保が難しい工程から機械への置き換えが進む構図を想定している。

これらの機器に分散型AIを適用すれば、人員不足の補完に加え、設備停止時間や労働災害の低減にもつながるという。報告書では、企業がAI導入によって得る追加売上高とコスト削減効果を基に、2035年の自律型産業運用分野の経済価値を年間230億ドル(約3兆4500億円)超と見積もった。

介護分野でも人手不足は深刻だ。Access Partnershipは、人口急減への対応策として分散型AIに注目し、移動支援、転倒検知、安全モニタリング、対話型の伴走・補助ロボットへの活用を挙げた。高齢者の自立した生活を支え、介護人材不足と費用負担の軽減につながるとしている。

健康状態や生体情報を外部サーバーに継続的に送信せずに済む点も利点として示した。伴走・補助ロボット分野の経済価値は、2035年に年間59億ドル(約8850億円)超に達すると見込んでいる。

分散型AIの活用先は、国内の現場だけにとどまらない。韓国企業が海外に販売する機器への搭載も想定しており、報告書は、韓国の貿易依存度がGDP比で91%水準にあることから、輸出競争力の変化が経済全体に与える影響は大きいと指摘した。

具体的には、スマートフォン、スマート家電、家庭・サービス向けロボット、拡張現実(XR)機器でオンデバイスAIや分散型AIの機能を強化すれば、製品の付加価値や世界シェアの拡大に加え、新たな製品群の創出にもつながるとした。この分野の価値は、2035年に年間210億ドル(約3兆1500億円)超と試算した。

その基盤として、Samsung Electronics、LG Electronics、Hyundai Motorといった最終製品メーカーに加え、ファウンドリー、メモリー、オンデバイス向けニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)の能力を挙げた。一方で、こうした機器が必要とする計算需要を現行の構成で賄えるかは別の問題だとも指摘している。

報告書は、クラウド中心でAIを動かす現在の構造では、こうした価値の創出を十分に支えきれない可能性があると分析した。現在のデータセンター投資のトレンドが続いた場合、2030年には必要なAI推論処理能力の約86%が不足する恐れがあると予測している。

3分野を合算した分散型AIの経済価値は、2035年に年間500億ドル超となる見通しだ。課題としては、追加投資に加え、主要国との標準化協力、特定事業者への依存を減らすためのサプライヤー多様化、産業別の安全・性能基準の整備を挙げた。

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