暗号資産Quant(QNT)が米銀行コンソーシアムのThe Clearing House(TCH)との協力報道をきっかけに急騰した直後、3年以上動きのなかった大口ウォレット2件が、計約1000万ドル(約15億円)相当のQNTを取引所に移したことが分かった。市場では、急騰局面を捉えた長期保有者の利益確定売りではないかとの見方が出ている。
米ブロックチェーンメディアのU.Todayが29日(現地時間)に報じた。オンチェーン分析企業Arkham Intelligenceによると、2023年以降取引のなかった2つの大口アドレスで、ほぼ同時に資金移動が確認された。
1つ目のアドレス「0x6d32」は、Binanceに8250QNTを送金した。送金時点の評価額は約188万ドル(約2億8200万円)。
もう1つのアドレス「0xd633」は、3万4200QNTを複数回に分けて移動し、総額は約805万ドル(約12億750万円)に達した。このうち9000QNT(約212万ドル、約3億1800万円)はCoinbaseとKrakenに送られた。
2つのウォレットによる移動額を合計すると、約1000万ドル規模となる。QNT価格が急騰し、個人投資家の買いが集まっていたタイミングで大口移動が重なったことから、市場の関心を集めた。
QNT急騰の主因となったのは、TCHとの協力に関する報道だ。JPモルガン、シティ、Bank of Americaなどが参加するTCHが、トークン化預金の統合に向けた技術パートナーとしてQuantを選んだと伝えられた。
TCHが運営する決済システムは、1日当たり約2兆ドル(約300兆円)規模の取引を処理するとされる。このため市場ではQNTへの期待が一気に高まり、供給量の限られた銘柄特性も上昇に拍車をかけた。
総供給量が約1460万枚に制限されるQNTは、56〜74ドル台から一時373ドル近辺まで急伸した。
もっとも、足元ではTCHとの協力が実際にQNTトークンの需要拡大につながるのかを見極める動きが強まっている。
TCHとQuantの協力は、銀行間の相互運用性を支えるソフトウェアやインフラの提供に軸足がある。今回の協力は、金融機関に市場でQNTを取得するよう求めるものではなく、決済でQNTの直接利用を義務付ける内容でもない。
このため、提携期待がQNTそのものの実需を先行して織り込んだ可能性もある。長期保有者が、こうした期待先行の相場と高値圏での価格推移を売却機会とみた可能性もある。
ただ、当該ウォレットがQuantの内部関係者の保有分なのか、一般の長期保有者によるものなのかは確認されていない。今回の移動だけで、内部者売りや特定主体による利益確定と断定するのは難しい。
価格変動も拡大した。長期保有分が取引所に移る過程で、レバレッジをかけたロングポジションの清算も発生し、一時は1時間当たりのロング清算額が43万ドル(約6450万円)まで膨らんだという。
急騰後のQNTは241〜253ドル台まで反落した。急激な上昇を支える材料があっても、それがトークン自体の直接需要に結び付かなければ、相場が短期的に過熱しやすいことを示した格好だ。
今回のケースは、銀行業界とのブロックチェーン・トークン化分野での協力が、直ちに当該プロジェクトのトークン需要増を意味するわけではない点でも注目される。今後は、追加の長期保有分が市場に流入するかどうかに加え、TCHとの協力がQNTの実利用にどう結び付くかが、価格と需給を見極める上での焦点となりそうだ。