Project Suncatcherのイメージ(画像=Google)

Googleは10月1日、独自のAI演算チップ「TPU」を搭載した衛星を低軌道に打ち上げる。宇宙環境でAIチップの動作可否を確かめる初の軌道実証で、将来的な宇宙AIインフラ構想「Project Suncatcher」の第一段階に位置付ける。

Googleと海外メディアの24日付の報道によると、打ち上げにはSpaceXの「Falcon 9」を使用し、ライドシェアミッション「Transporter-18」で投入する。衛星はPlanetと共同開発し、GoogleのTPUを4基搭載する。

4基のTPUは、データセンターのサーバー1台分に相当する演算能力を持つという。衛星は約1キロワットの太陽光発電で稼働し、簡易なAIクエリを処理する。

実証期間は約1年間を想定する。衛星は最大6年間軌道上にとどまった後、大気圏に再突入する見通しだ。

今回の実証で焦点となるのは、TPUが宇宙環境に耐えられるかどうかだ。打ち上げ時には衛星に最大10G程度の加速度がかかり、個々の部品には50〜100Gの力が及ぶ可能性がある。

Googleはこれに先立ち、衛星を3軸方向に振動させて打ち上げ時の環境を再現する試験を実施し、ハードウェアがこれに耐えたとしている。

放射線耐性も主要な検証項目の一つだ。Googleはカリフォルニア大学デービス校のCrocker Nuclear LaboratoryでTPUに陽子ビームを照射し、宇宙放射線環境を模擬した。

放射線は、半導体内でデータの0と1が反転する「ビットフリップ」などの不具合を引き起こす可能性がある。Googleによると、初期試験ではTrillium TPUが5年間の宇宙任務で想定される水準を上回る放射線量に耐えたという。実際に長期間稼働できるかどうかは、今回の軌道実証で検証する。

熱管理も大きな課題となる。宇宙空間は真空のため、地上のデータセンターのように空気の流れで排熱することが難しいためだ。

Googleはヒートパイプと放熱板を組み合わせた冷却システムを開発しており、宇宙空間で性能を試す計画だ。現時点では、衛星に搭載したTPUは約15分連続で稼働した後、停止して放熱する必要があるとしている。

このため、今回のミッションは大規模な宇宙データセンターの運用を目的としたものではなく、宇宙でAI演算ハードウェアを動かすための技術要件を確認する実証実験となる。

Project Suncatcherは昨年11月に初めて公表された。Googleは、太陽光を利用する衛星にTPUを搭載し、複数の衛星を接続して宇宙で機械学習演算を行うインフラの研究を進めている。

Googleによると、低軌道の衛星はほぼ継続的に日照を得られ、特定の軌道では地上の太陽光パネルに比べて最大8倍の発電生産性が見込めるという。

同社は衛星間通信技術の開発も進める。複数の衛星が連携してAI演算を行うには、衛星間での高速なデータ通信が欠かせないためだ。

Googleはレーザーを使った自由空間光通信を研究しており、2027年には衛星2基を追加投入して関連技術を検証する予定だ。

宇宙ベースのAIデータセンターを巡る競争も激しくなっている。SpaceXは2月、AI企業xAIとの統合を発表し、宇宙ベースのAIインフラ構想を打ち出した。

また、SpaceXは米連邦通信委員会(FCC)にAI演算用衛星を最大100万基配備する計画を申請したとされる。Blue Originも3月、AI演算に対応する衛星約5万2000基を配備する「Project Sunrise」計画をFCCに申請した。

宇宙データセンター構想が注目される背景には、AI演算に必要な電力需要の急増がある。Googleの2025年の研究では、打ち上げコストが2030年代半ばまで下がり続け、1キログラム当たり200ドル以下になれば、宇宙データセンターの打ち上げ・運用コストは地上データセンターの電力コストに近づく可能性があるとした。

一方で、熱管理や衛星間の高速通信、軌道上システムの信頼性といった技術課題はなお残る。

今回の打ち上げは、Project Suncatcherの実現可能性を見極める最初の本格実証となる。Googleは軌道上でTPUの耐久性や放射線の影響、放熱性能を確認し、今後の衛星ベースAI演算インフラの設計に反映させる考えだ。

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