【マウイ(米国)】Qualcommは、スマートウォッチやイヤホン、AIグラスなど複数のウェアラブル端末で取得した情報を共有し、最適な機器でAIを処理するマルチデバイス構想を打ち出した。iPhoneやAndroidスマートフォン、Windows PCをまたいで複数ブランドの機器を併用する利用形態が広がる中、OSの枠を超えた共通基盤と業界標準の整備が課題になっている。
Qualcommのジアド・アスガル上級副社長(XR・ウェアラブル・パーソナルAI部門)は23日(現地時間)、「Snapdragon Summit」の「パーソナルAI・サウンド」に関するメディアQ&Aで、「ウォッチからは活動量、心拍数、ストレスレベルを取得し、イヤホンからは追加の健康シグナル、グラスからは映像情報を得られる」と説明した。その上で、「こうした複数機器の入力を1台に集約し、AIを実行する端末に渡す形になる」と述べた。
AI処理を担う機器は、ユーザーの質問や処理内容によって変わるという。アスガル氏は、グラスやウォッチで対応できる簡単な問い合わせはその場で処理し、バッテリー駆動時間や遅延の面で最も適した場所でAIを動かす考えを示した。
一方で、どの端末がAIを処理する場合でも、全体の文脈を保持する仕組みが欠かせないとした。Qualcommは、OSに依存せず各デバイスが文脈を共有できる共通ソフトウェア基盤を下位レイヤーで開発している。アスガル氏は「複数のプラットフォームで動作させる必要があり、そのためにはより低い層の仕組みが必要になる」と語った。
同社は、端末ごとの情報や演算能力、AI処理能力を共有するフレームワークを「マルチデバイス・エクスペリエンス」と位置付ける。アスガル氏は「これを本格的に実現するなら、事実上の業界標準になる必要がある」と述べ、「今後、この方向の取り組みについてさらに発信していく」とした。
接続技術については、まずオーディオ機器分野で実装を進めている。Qualcommのアンドリュー・レイスター上級プロダクトマネージャーは、「Snapdragon Sound Elite第2世代は、状況に応じてBluetoothとWi-Fiを使い分ける『Qualcomm XPAN』を継承した」と説明した。これにより、Wi-Fiのデータ転送速度は3倍以上に高まり、Wi-Fi 6E帯域にも対応できるようになったという。
アスガル氏は、「映像をクラウドに送る必要があるスマートグラスでは、こうした転送速度と接続範囲が重要になる」と指摘した。さらに、「Metaが同日発売したオーディオグラスもSnapdragonベースだ」と述べた。
グラス製品は、用途によって採用するプラットフォームや接続方式が異なる。カメラを搭載しないオーディオ専用グラスにはSound Elite第2世代、高解像度写真を撮影するグラスにはSnapdragon AR1を用いるという。SnapのARグラス「Spectacles」は、アプリと認識技術を分散処理するためSnapdragonプラットフォームを2基搭載しており、他の機器に演算処理を移さない構成だ。
移動中の通信は、現時点ではウォッチやスマートフォンのモデム経由でクラウドに接続する形が中心となる。レイスター氏は「スマートフォンの代替を狙うものではない」とした上で、「スマートフォンを取り出しにくい特定の場面に向けた機能だ」と説明した。
Qualcommは、AIグラスに5Gを直接搭載する案も検討している。アスガル氏は「電力効率が改善すれば、AIグラスのバッテリーでも5G接続を賄える」と述べ、「通信事業者のパートナーからも強い関心が寄せられている」と明らかにした。さらに、「5Gを搭載すれば、グラスは単独で動作する端末になる」と付け加えた。