カザフスタンの首都アスタナが、グローバルテック業界の新たな集積地として存在感を高めている。BinanceやTelegramに加え、著名投資家や起業家の進出・事業拡大が相次いでおり、政府による税制優遇やデジタルノマド向けビザが追い風になっている。一方で、規制問題を抱えた企業や人物の移転先として注目されているとの見方もある。
米Business Insiderは7日(現地時間)、BinanceやTelegram、バラジ・スリニバサン氏らが相次いでカザフスタンに進出、あるいは現地事業を拡大していると報じた。中央アジアのテックハブとしての期待が高まっているという。
直近では、Coinbaseの元最高技術責任者(CTO)で、Andreessen Horowitzのパートナーでもあるバラジ・スリニバサン氏が、カザフスタンで滞在型のスタートアップコミュニティを正式に立ち上げた。
同氏は、8月にマレーシア拠点での運営が中断した後、創業者や暗号資産関係者、デジタルノマドを対象とする「ネットワーク・スクール」をアスタナで再開した。拠点は、テック企業向けの税制優遇を提供する技術パーク「アスタナ・ハブ」に置かれている。
スリニバサン氏は、カザフスタンについて、国際物理オリンピックで最近首位を獲得した先端技術国家だと評価。優秀で意欲の高い若い人材が多く、世界中の人材を引きつけていると述べた。
暗号資産業界でも動きが続く。先週アスタナを訪れたチャンポン・ジャオ氏は、カザフスタンの技術、教育、インフラのプロジェクト規模について「特に印象的だった」と語った。
Binanceはカザフスタン政府と3件の合意を締結した。カザフスタン発のステーブルコインの検討に加え、Binanceの地域運営機能やインフラの一部を現地に整備する方針などが含まれる。
Telegramも現地での展開を強めている。パベル・ドゥロフ氏は2024年にカザフスタンを訪問し、同国を「中央アジアの経済大国」と評価した。
ドゥロフ氏は自身のTelegramチャンネルで、カザフスタンの美しさはその野心に見合うものだと投稿。企業寄りの政策と友好的な税制が、国際企業やテックスタートアップを引き寄せていると発信した。
その後、Telegramはカザフスタンで初の地域オフィスを開設した。アスタナのスーパーコンピューティング基盤を活用するAI研究所も立ち上げている。
カザフスタンへの関心は一部の著名人にとどまらない。ベンチャー投資家のティム・ドレイパー氏や、Google Chinaの元社長カイフー・リー氏も、同国を起業とAIの拠点として評価している。
こうした動きの背景には、カザフスタン政府の人材誘致戦略がある。同国はこの2年間で、海外のテック人材やリモートワーカー向けに、デジタルノマドビザとネオノマドビザを導入した。
カシムジョマルト・トカエフ大統領は5月、高度人材や起業家、外国人投資家の呼び込みに向けた追加の移民制度改革を指示した。
ジャスラン・マディエフ副首相は7月の報道資料で、「AIは、才能ある人材と大胆なアイデア、そしてそれを実現する環境がそろう場所で発展する」とした上で、「カザフスタンはまさにその生態系を構築している」と述べた。
一方で、カザフスタンを積極的に支持する一部のテック業界関係者については、他地域で規制問題に直面した後に拠点を移した点も指摘されている。
ドゥロフ氏は、ロシア政府によるTelegramへのアクセス要求を巡って長く対立してきた。現在はテロ関連容疑を巡る問題も抱えている。
フランスでも、2024年の逮捕後、Telegramを通じた犯罪行為の疑いを巡る公式捜査を受けている。
ジャオ氏は2023年、米国で資金洗浄防止法違反について有罪を認め、Binanceの最高経営責任者(CEO)を退任した。Binanceは米連邦当局との問題解決に向け、40億ドル超を支払った。
スリニバサン氏もこの夏、規制問題に直面した後、マレーシアで運営していたネットワーク・スクールの拠点をカザフスタンへ移した。
カザフスタンはこうした関心を追い風に、世界のテック人材と企業の誘致を強めている。ビザ、税制優遇、技術インフラを組み合わせた戦略が、実際の投資や拠点移転の拡大につながるかが今後の焦点となる。