NECが量子コンピュータの実機に当たるハードウェア開発を3月末で停止したことが分かった。実用化に向けた有力な方式が定まらず、技術面の課題も多い中で、開発を続けても費用対効果を見込めないと判断したとみられる。今後は量子計算技術の開発や関連サービスに重点を移す。
ITmediaが8日報じたところによると、NECは3月末にハードウェア開発を止めた。背景には、実用化までに解決すべき課題の多さがあるという。
今回の判断は、量子コンピュータのハードそのものの優劣というより、事業性を踏まえた戦略の見直しといえる。有力な実用化方式が固まっていないうえ、技術的なハードルも高く、巨額の投資を継続しても見合う成果を得にくいと判断したもようだ。
NECは量子コンピュータ分野で早くから研究開発を進めてきた。1999年には、量子コンピュータ開発の基盤技術の一つとされる超伝導キュービットを世界で初めて実現した。超伝導方式は現在、GoogleやIBMが採用する流れにもつながる技術系統とされる。そうした先行技術を持つ企業が、商用化局面でハード開発の戦略を見直した格好だ。
今後の焦点は、NECが量子事業の重心をどこに移すかにある。ハードウェア競争を続けるのではなく、量子コンピューティング技術の開発と関連サービスに軸足を移すとみられる。ITmediaも、NECが今後は量子コンピューティング技術とサービスに重点を置くと伝えている。
今回の決定は、量子コンピュータ産業全体がなお模索段階にあることも示している。実用化に適した有力方式が定まらない中では、大規模なハードウェア投資を長期にわたって続けるハードルは高い。3月末という停止時期にも、こうした現実的な判断が反映されたとみられる。
NECは実機開発を止めた一方で、量子コンピューティング技術そのものの開発まで取りやめるわけではない。今後はどのようなサービス形態で量子技術事業を継続するのかに加え、今回のハード開発停止が日本の量子コンピュータ産業にどのような影響を及ぼすのかが注目される。