BusinessCanvasのキム・ウジン代表

BusinessCanvasは、AIを活用したB2Bマーケティングソリューション事業で、創業から約6年で損益分岐点に到達した。国内でB2Bスタートアップを取り巻く事業環境が厳しさを増す中での到達となる。

成長を押し上げたのは、1月に公開したアカウント・インテリジェンス・ソリューション「Athena」だ。同社はAthena投入後に成長ペースが加速し、損益分岐点の到達につながったとしている。キム・ウジン代表は、今回の成果は一時的なものではないとした上で、「今年下期から来年にかけて、売上はさらに速いペースで伸びる」と述べた。

Athenaは、海外進出を進めるB2B企業向けの営業支援ソリューションだ。攻略すべき企業やアプローチのタイミング、接点の持ち方をデータとAIで見極め、有望な相手を抽出する。必要に応じてCレベルとの商談設定まで手掛ける、サブスクリプション型のグローバルGTMサービスとして提供している。

同社は、AIを活用したデジタル基盤と人のノウハウを組み合わせ、海外市場の開拓を目指す国内企業を主な顧客層に据える。AthenaはすでにLGグループ6社とSamsungグループの系列会社でも導入されているという。

Athenaは、SNSやポッドキャスト、Webサイトなどから収集した公開データに加え、有料データベースの情報を顧客企業の事業文脈に合わせて分析する。その上で、グローバル営業で有望な相手を絞り込む。実際のミーティング対応は、Athenaエンジンを基盤にBusinessCanvasの専門人材「Hunter」が担う。

AI活用が進む中でも、同社は顧客接点の「ラストマイル」にこそ競争力の源泉があるとみる。キム・ウジン代表は、AIマーケティングプラットフォームの中核はインフラではなく、最終的に顧客とつながる局面にあると強調する。そこでの実行はなお人の役割が大きいという立場だ。

キム・ウジン代表は「データ加工はすでにAIが得意とする領域だ。重要なのは、AIが苦手な部分をどう仕組み化するかにある。AIで容易に実現できる機能は参入障壁になりにくい。ミーティングはマーケティングの最終レイヤーであり、そこで必要な実行はAIだけでは代替しにくい。この領域での競争力がAthenaの参入障壁だ」と語った。Web上のデータ探索そのものは差別化しにくい一方、実際に会える状態まで持ち込むには、顧客と市場に関する暗黙知が欠かせないという。

営業特化型AIスタートアップとして知られるClayとの違いも、このラストマイルにある。ClayがAIベースのデータ提供基盤に近い位置付けだとすれば、Athenaはデータ分析を起点に商談設定までつなげる、より顧客接点に近いサービスだ。キム・ウジン代表は「Athenaはラストマイルに焦点を当てている。付加価値はデータそのものではなく、結果につなげる実行領域にある」と話した。

もっとも、Athenaは人とAIの協業を前提としながらも、役割分担の中ではAIの比重を高めている。キム・ウジン代表は「メッセージ送信はもちろん、顧客別分析を反映したプレイブック作成も8割近くをAIが担っている。今後はAIの比重がさらに高まる。ラストマイルを人が担うとしても、その内部でAIが担う範囲は広がっていく」と説明した。

AI時代における人材の重要性については、特定業界の専門知識そのものより、データやAIへの理解が一段と重要になるとの見方も示した。Athenaに限れば、AIの進化によって特定分野の専門性は以前ほど決定的ではなくなりつつあるという。キム・ウジン代表は「市場分析はむしろAIの方が得意な面もある。重要なのは、どのデータベースを使い、どのプロンプトでどのような成果物を引き出すかだ。AIを理解していれば、産業ごとの専門性は乗り越えられる課題になりつつある」と述べた。

BusinessCanvasは創業後、複数回のピボットを経て、現在はグローバルGTMサービスを強みとする企業へとかじを切った。初期には統合ドキュメント作業ソフト「Typed」を展開し、その後は顧客関係管理(CRM)ソリューションや、SEO、ABM、Webサイト構築、営業戦略設計のコンサルティングから実行支援までを手掛ける「Growth Lab」を投入した。CRMソリューション「Recatch」は、SalesforceのようなCRMに利用者が手入力する負担を減らし、録音の文字起こしを基に議事録作成や入力も自動化できる点を特徴としている。

同社は今後、Athenaを軸にグローバル市場への展開も進める。キム・ウジン代表は「米国などでは現地のHunterの採用も進めている。Athenaをより高機能かつコスト効率の高いサービスへと磨き上げ、より多くの国内企業が輸出に踏み出せるよう支援したい」と述べた。

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