米ノースカロライナ大学(UNC)の基金が、直近1年間で30%を超える運用成績を記録した。未上場時から投資してきたSpaceXの価値上昇が大きく寄与したとみられ、米大学基金の間では未上場テック投資を見直す動きも出ている。
米メディアのCryptopolitanが7日(現地時間)に報じたところによると、UNC Managementが運用する資産は約150億ドル。2026年6月までの1年間の運用成績は30%を上回った。
最大の押し上げ要因として挙げられているのがSpaceXだ。UNCのSpaceX関連の保有分は、未上場の段階で基金全体の約1割を占めるまでに膨らんだという。
UNCは世界金融危機の前後から、SpaceXへの間接投資を始めた。当時のSpaceXは、イーロン・マスク氏が率いる新興のロケット企業にすぎず、巨額の資金を要する宇宙産業の特性から、高リスクの投資先とみられていた。
投資は、ピーター・ティール氏が2005年に設立したベンチャーキャピタル、Founders Fundを通じて始まった。UNC Managementは同ファンドの初期投資家の一つで、Founders FundによるSpaceX投資を通じて間接的な持ち分を得た。
その後、2009~2010年ごろには、Founders FundがUNC側に対し、SpaceXへの追加出資を提案した。
これに強く反対したのが、当時UNCチャペルヒル校の学長だったホールデン・ソープ氏だ。ソープ氏は当時、投資チームに「正気か」と問いただしたと振り返っている。
ソープ氏は、ロケット開発はベンチャー投資の対象としてリスクが大きすぎると判断していた。開発・製造に莫大な費用がかかるうえ、SpaceXが事業継続に必要な資金を調達し続けられるか見通しにくかったためだ。
当時のベンチャー投資業界には、製造業やハードウェア分野には投資しないという見方もあった。比較的少ないコストで拡大しやすいソフトウェアやテクノロジー企業に資金を投じ、高いリターンを狙うのが一般的で、ロケットを手がけるSpaceXは異色の投資先だった。
それでもUNC Managementは投資を進めた。時間の経過とともにSpaceXの企業価値は大きく上昇し、結果的に投資チームの判断が正しかったことを示す形になった。
ソープ氏も現在では、自らの判断が誤りだったと認めている。投資チームが反対意見に従わなかったのは、むしろ幸運だったと述べた。
UNCのSpaceX投資を主導したのは、ジョナサン・キング氏とケビン・チュニック氏だった。キング氏は2025年に退職するまで20年以上にわたり運用を担い、チュニック氏も2023年に退職するまで約15年間、プライベート投資を担当した。
こうした動きはUNCに限らない。米主要大学の基金でも、未上場テック企業への投資が再び運用成績を押し上げる例が出ている。
Cambridge Associatesは、同じ期間に20%超上昇したS&P500に追いつく、あるいは上回る大学基金もあると分析した。大学基金・財団分野を担当するマーガレット・チェン氏は、直近の成績をけん引しているのは、ごく少数の極めて成功した未上場企業だと指摘した。
とりわけ今年は、これまで大学基金の成績の重荷とみられてきたプライベートのテック投資に対する見方が変わりつつある。未上場企業のうち、SpaceXや一部のAI関連企業の価値が大きく上昇し、長期投資の成果が時間をかけて表れてきたためだ。
一方、過去の実績は対照的だった。全米大学・大学事業責任者協会とCommonfundの集計によると、資産50億ドル以上の大学基金の、2025年6月までの3年間の年率換算リターンは7.8%にとどまった。
同期間のS&P500の年率換算リターンは19.7%で、大学基金を大きく上回った。2021年以降に未上場企業の評価額が下落し、新規株式公開(IPO)や合併・買収(M&A)が減少したことで、基金によるプライベート投資の回収機会が細ったことが主因とされる。
ただ、2026年に入って状況は変わり始めた。チェン氏は、プライベート市場で勝ち残った少数の大型案件に投資していた機関にとって、今年はとりわけ存在感の大きい年になっていると評価した。
コロラド大学財団も近い成績を示した。約35億ドルのポートフォリオを運用する同財団は、2026年6月までの1年間で20.3%の運用成績を記録。こちらも、2009年から投資してきたSpaceXが大きく貢献したと伝えられている。
もっとも、大学基金の実績を厳密に比較するにはなお時間が必要だとの見方もある。未上場資産は、公開市場でリアルタイムに価格が付く上場株と異なり、企業価値の見直しが運用成績に反映されるまで時間差が生じるためだ。
UNCの事例は、大学基金の長期にわたるプライベート投資が、最終的にどれほど大きな成果の差を生み得るかを示した格好だ。かつては過大なリスクとみなされたSpaceXへの投資が、数年後には基金全体の成績を押し上げる中核資産へと変わった。
今後の焦点は、SpaceXやAI関連を含む少数の大型未上場企業が、大学基金の成績改善をどこまで持続的に支えられるかにある。長らく公開市場に見劣りしてきた米大学基金が、保有してきたプライベートテック資産の価値上昇を追い風に、再び差を縮められるかが注目される。