フォルダブルMacの成否は、折りたたみ画面そのものではなく入力技術の完成度が左右するとの見方が出ている。写真=Shutterstock

Appleが構想するフォルダブルMacについて、開発が打ち切られたわけではなく、長期的な開発テーマとして継続している可能性が浮上している。焦点は折りたたみディスプレイそのものではなく、展開時に既存のノートPCに近いキーボード体験をどう実現するかだ。

米ITメディアの9to5Macは7日(現地時間)、Appleが折りたたみ型Mac、もしくはiPadベースの端末を直ちに市場投入する段階にはない一方、フォルダブル製品の開発方針自体を放棄したわけではないとの見方を伝えた。

最近は、ジョン・ターナス体制で優先度が高かったフォルダブル端末プロジェクトが中止されたとの報道もあった。ただ、今回の分析では、初代モデルの構想が後ろ倒しになった可能性はあるものの、プロジェクト自体が完全に終了したと断定するのは難しいとしている。

Appleが長期的に構想しているのは、MacとiPadを単純に融合したハイブリッド機ではなく、大画面の活用を軸にしたフォルダブルMacに近い製品だとみられている。

最大の課題は入力方式にある。フォルダブルMacが従来のノートPCとは異なる形で成立するには、画面を広げた際に単一の大画面を十分に生かせる設計が欠かせない。一方で、物理キーボードを固定した現在のノートPC型の構造では、折りたたみの利点を引き出しにくい。

このため、Appleが先に解決すべきテーマとして、表示や機能を動的に切り替えられるキーボードが挙げられている。起動するアプリに応じてキー配列や表示内容を変える仕組みで、例えば動画編集ソフトでは、一般的なQWERTY配列ではなく、編集用ショートカットや関連機能を前面に出した表示に切り替えるイメージだ。物理キーボードに近い触感を保ちながら、ソフトウェアに合わせて入力環境を最適化できる点が利点になる。

さらに将来的には、物理キーボードをなくし、画面そのものをキーボードとして使う方式が目標になる可能性もある。ただし、この段階になると技術的なハードルは一段と高い。平坦なガラス面で長時間入力する操作は一般的なキーボードより疲労が大きく、入力の成否を触覚で確認しにくい。タッチタイピングのように、指先でキー位置を把握しながら打鍵する使い方にも課題が残る。

Appleはこうした問題への対応策を特許で示している。曲げられるディスプレイを使い、仮想キーを押した際に画面表面が実際に変形する仕組みのほか、ハプティックモーターを用いて物理キーに近いフィードバックを与える方式などだ。

また、静電気などを活用して、平らな画面上でも指先に微細な質感の違いを伝える技術も提案している。これにより、ユーザーが画面上の仮想キーの位置を感覚的に把握し、物理キーボードに近い入力体験を得られるようにする狙いがある。

関連する研究例もある。2023年には、カーネギーメロン大学の研究チームが、画面やトラックパッドのように物理キーを持たない表面で触覚フィードバックを実装する方法を研究した。

既存製品では、AppleのMac向けトラックパッドが先例として挙げられる。物理的に可動する部品がなくても、実際にクリックしているような感覚を提供しているためだ。技術がさらに進めば、ソフトキーボードでもトラックパッドに近い仕組みによって、物理キーボードに近い使用感を再現できるとの見方もある。

実際にAppleがフォルダブルMacを投入した場合、使い方そのものも従来のノートPCとは変わる可能性がある。ノートPCのように使う場面では画面にキーボードを表示し、作業内容に応じて配列を切り替える。一方、動画視聴では端末を完全に広げて大型の単一画面として使える。Apple Pencilによるスケッチや手書き入力も、大画面を生かす代表的な用途になり得る。

こうした点から、現時点の開発状況を単純に「発売中止」と受け止めるのは早計だとの見方が出ている。Appleにとっての本質的な課題はフォルダブルディスプレイの実装ではなく、新しい入力体験を成立させる技術の成熟にある。製品化は、その条件が整うまで先送りされている可能性が高い。

キーワード

#Apple #フォルダブルMac #Mac #iPad #ソフトキーボード #触覚フィードバック #特許
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.