米連邦準備制度理事会(FRB)は2日公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済活動の伸びが小幅にとどまる中でも、データセンターとAI関連投資が製造業や建設業の需要を下支えしているとの認識を示した。
3日付のCryptopolitan報道によると、ベージュブックは8月末までの経済情勢について、全体では緩やかな拡大にとどまった一方、データセンターやAIに関連する需要が複数の地域で目立ったとした。
この動きは、世界的なAIインフラ投資の拡大とも重なる。AmazonやMicrosoftなどの大手クラウド事業者がデータセンター増設に資金を投じ、AI処理能力を巡る競争を主導しているためだ。FRBは、製造業がデータセンターや国防関連の受注の恩恵を受けているほか、非住宅建設でもデータセンター案件の比重が高まっていると指摘した。
もっとも、景気判断は総じて慎重だった。全12地区の連邦準備銀行の定性評価をまとめた今回の報告書は、8月24日までに収集した情報に基づき、雇用は小幅増、物価は緩やかな上昇が続いたと説明した。企業は負担要因として、エネルギーコストの上昇、政策の不確実性、国際紛争を挙げた。こうした中、FRBはAIが労働需要に対し、プラスとマイナスの両面の影響を及ぼしていると評価した。
建設分野では、データセンター投資の寄与がより鮮明だった。シカゴ連銀管轄地域の回答者の1人は、「データセンターがなければ建設は景気後退の状態だったはずだ」と述べた。データセンター投資が一部の建設需要を支えていることを示す一方、大手事業者の投資減速が現実化した場合、関連産業への影響が大きくなり得ることも示唆している。
こうした傾向は民間の見通しにも表れている。PricewaterhouseCoopers(PwC)は2日公表した世界データセンター見通しで、世界のAIインフラ向け資本支出が2050年までに累計31兆6000億ドルに達すると予測した。年間のデータセンター資本支出は、2026年の約8000億ドルから2050年には1兆8000億ドルに増える見通しだ。地域別では、米国が15兆1000億ドルを占め、アジア太平洋地域は8兆2000億ドルを取り込むとした。PwCは最大の制約要因として、安価で安定的かつ低炭素な電力の確保を挙げた。
ウォール街もこの動きを注視している。ゴールドマン・サックス・リサーチは8月19日付の報告書で、ハイパースケーラーの支出拡大やサーバー、モデル性能の改善を追い風とみる一方、米国内で広がるデータセンター建設への反対運動が、現在の投資サイクルの持続性に疑問を投げかけていると指摘した。ベージュブックも、建設業と製造業で投入コスト圧力が強まっているとし、とりわけエネルギー、輸送、金属、石油化学分野の負担増に言及した。
市場の関心は9月15〜16日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)に移っている。2日時点では、市場は利上げの可能性を約65%、据え置きの可能性を35%織り込んでいた。こうした見方の変化は、ケビン・ウォッシュFRB議長が8月28日のジャクソンホール講演で、物価目標への回帰が十分に明確かつ速いペースで進まなければ、政策当局にはなお対応すべき課題が残ると述べた後に広がった。ウォッシュ氏は当時、FRBにとって最も重要な焦点はいま物価だと語った。
焦点は、AIインフラ投資の拡大が景気を押し上げる一方で、金利やコストの面では重荷にもなり得る点にある。データセンター建設は製造業と建設業の需要を押し上げる半面、電力、資材、熟練人材、資本を巡る競争も激化させる。モルガン・スタンレーは、2028年までの世界のデータセンター建設コストが約2兆9000億ドルに達すると予測し、2026年の米国内総生産(GDP)増加分の約25%がAI関連投資によるものになり得ると試算した。FRBが引き締め姿勢を維持すれば、企業や公益事業者、政府の調達コストが上昇し、米国のみならず世界のAI投資の拡大ペースにも影響を及ぼす可能性がある。