人工知能(AI)の導入が広がる中でも、企業は大規模な解雇より既存社員の再教育を優先していることが分かった。ニューヨーク連邦準備銀行がニューヨーク州と北部ニュージャージー州の企業を対象に実施した調査で明らかになった。
米ITメディアのTechRadarが2日(現地時間)に報じた。調査によると、直近6カ月にAIを導入したサービス業のうち、AIを理由に従業員を解雇したと答えた企業は4%にとどまった。製造業では、2025年と2026年の調査いずれでもAI関連の解雇事例は確認されなかった。
一方、AI導入そのものは急速に進んでいる。サービス業の導入率は2024年の25%から2025年に40%、2026年には61%まで上昇した。製造業も同じ期間に16%から26%、51%へと伸びた。ただ、AIを導入した企業の多くは投資規模をなお小規模または中程度とみており、その割合はサービス業で75%、製造業で9割超に上った。
採用面では業種によって差も出た。サービス業では約15%が、AIの影響で当初計画より採用を減らしたと回答し、前年の12%から小幅に上昇した。一方で13%は、AI活用に向けて新たに人材を採用した。製造業では、今年の調査でAIを理由に採用を増やしたとの回答はなかった。
今回の調査でより顕著だったのは、解雇より再教育の広がりだ。AI導入企業のうち、既存社員にAI教育を実施した企業は、サービス業で3分の1超、製造業で2割超に達した。教育内容は、チャットボットなどのツールの使い方に加え、定型業務の自動化、プロンプト作成、AIの出力結果の検証、セキュリティ教育に及んだ。
ニューヨーク連邦準備銀行は、既存人材はAIに代替されるよりも、再教育の対象となる可能性の方がはるかに高いと分析した。
もっとも、AIによる雇用ショックが起きていないと結論付けるのは尚早だ。調査対象企業の一部では新規採用を抑える動きも出ており、AIの活用範囲や投資水準もなお限定的という。ニューヨーク連邦準備銀行は、現時点ではAIは大規模な雇用削減よりも業務の進め方や求められるスキルを変える方向に作用しているが、技術の成熟に伴ってこの傾向が変わる可能性もあると説明している。