元Ripple CTOのデイビッド・シュワーツ氏は、4241万7785.62USDTの凍結を巡る訴訟に関連し、Tetherが裁判所命令に先立って実施した資産凍結は法的・実務的に妥当だったとの見解を示した。争点は、ステーブルコイン発行体が司法判断前に大口資産を凍結できるかどうかにある。
ブロックチェーンメディアのU.Todayが2日付で伝えた。
訴訟は、米ニューヨーク南部連邦地裁で扱われている民事案件に関連するもの。タイの事業家らは、Tetherが昨年10月30日、裁判所命令がない段階で10のウォレットに保管されていた4241万7785.62USDTを凍結したとして、凍結解除と損害賠償を求めている。
凍結は、米国土安全保障捜査局(HSI)からの非公式な要請を受けて行われた。当時の捜査対象は、国際的な「豚の屠殺」詐欺とされる。一方、当該資金の差し押さえを認める正式な裁判所命令が出たのは、凍結から約4カ月後の今年2月19日だった。
原告側は、問題のUSDTを二次市場で善意で取得しており、犯罪に関連する資金とは認識していなかったと主張している。あわせて、凍結解除に加え、凍結中資産の運用益に相当する損失を含む機会損失の賠償も求めている。
これに対し、シュワーツ氏はTetherの対応を支持した。資産の帰属を巡って複数の主張が対立する局面では、「二重責任の回避」が重要だと指摘。正当な所有者が確定していない段階で発行体が独自判断で資産を返還するのではなく、裁判所の判断が出るまで保全するのが妥当だとの認識を示した。
また、TetherがHSIからの事前警告を無視するのは難しかったとも述べた。警告を受けながら凍結しなければ、詐欺グループが約4200万ドル規模の資金をミキサーなどを通じて移動させる可能性があり、その場合、Tether自身もマネーロンダリング幇助を巡る刑事責任を問われかねなかったと説明した。
今回の案件は、ステーブルコイン発行体が抱える構造的なジレンマも浮き彫りにしている。裁判所命令なしに資産を凍結すれば利用者から民事責任を追及される可能性がある一方、捜査当局の要請に迅速に応じなければ、資金洗浄や犯罪収益に関する責任を問われるおそれがあるためだ。
最終的な焦点は、ステーブルコイン発行体に対し、利用規約や内部のセキュリティ・コンプライアンス方針を根拠として、裁判所の正式命令前に大規模なデジタル資産を凍結する権限をどこまで認めるかにある。
米ニューヨーク南部連邦地裁の判断は、Tetherの責任範囲にとどまらず、今後のステーブルコイン業界における資産凍結の基準にも影響を与える可能性がある。捜査当局の要請に基づく事前凍結と、利用者保護のための司法統制の間で、民間発行体の裁量をどこまで認めるのかが主要な論点となりそうだ。