国際決済銀行(BIS)は、経済統計データの改ざん有無を確認する公開検証レイヤーとして、XRP Ledger(XRPL)を用いた概念実証(PoC)を行った。統計データそのものではなく、ハッシュに相当する情報をブロックチェーンに記録し、配布されたファイルが原本と一致するかを検証する仕組みだ。
BISが2日(現地時間)に示した内容によると、今回のPoCは、公式統計データセットのハッシュ情報をブロックチェーンに記録し、利用者が受け取ったファイルの真正性を確認することを目的としている。
背景には、公式統計ファイルの配布がデジタル化され、AIツールを含む自動化システムによる利用が広がっていることがある。こうした環境では、利用者がダウンロードしたファイルが発行機関の公開データと同一かどうかを確認する手段が重要になる。BISは、公式統計交換標準のSDMxがデータの掲載・配布を支える一方、出所を明確に示す仕組みには課題があると指摘した。
PoCで採用したのは、データ本体をブロックチェーン上に載せるのではなく、データセットのハッシュに相当する情報のみを記録する方式だ。システムはデータセットのルート値をXRPLに記録し、利用者側で受け取ったファイルのハッシュ情報と照合することで、変更の有無を確認する。BISは、検証に必要な暗号学的情報をブロックチェーン上に保持すると説明している。
実装はXRPLのDevnet上で行った。ルート値は決済トランザクションのメモフィールドに記録し、XRPLの低コストと短い確定時間を前提に設計したという。BISは、システム全体を低コストかつ短時間で検証できる構成にしたとしている。
試験結果によると、統制されたテスト環境におけるプロトタイプの掲載遅延時間の中央値は約3〜5秒、検証時間は約1〜2秒だった。公式統計の配布後、短時間で原本との一致を確認できることを示した形だ。
適用範囲はSDMxに限らない。開発チームは、現行の構造はSDMxを中心に構築したとしながらも、XBRLを含む他の構造化報告形式にも拡張できるとの見方を示した。経済統計にとどまらず、構造化された報告データ全般への展開余地があるとしている。
もっとも、BISは今回の結果について、正式導入を意味するものではないと明確に区別している。実験はあくまで概念実証の段階にあり、制度適用や本格運用への移行を発表したものではない。
今回の試験は、XRPLの活用可能性を巡る議論でも注目を集めそうだ。BISによる検証は、公開ブロックチェーンを公式統計データの真正性確認に結び付けた事例といえる。ただ、現時点では限定的な環境で性能を確認した段階にとどまっており、実際の機関システムへの適用には今後の検討が必要となる。