Strategyは、優先株型証券「STRC」の価格を額面100ドルへ戻すため6億3520万ドル(約953億円)を投じた。ただ、足元のSTRCはなお97ドル前後で推移しており、今後は自社による買い支えを縮小した後も外部投資家の需要が100ドル近辺を維持できるかが焦点となる。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが2日付で報じたところによると、マイケル・セイラー氏は、STRCを9月8日までに100ドルへ戻すことを非公式な目標として示している。
注目されるのは、STRCの価格維持にかかるコストの増大だ。Strategyは7月に買い戻しを始めた当初、価格のディスカウント幅が大きい局面では資金投入を増やし、100ドルに近づけば外部投資家の需要が自社の買いを補うとみていた。だが実際には、ディスカウント幅が縮小するにつれて週次の支出は増加した。
同社が確保した買い戻し原資は上限10億ドルで、このうち残額は3億6480万ドル。現在の執行ペースが続けば、余力は急速に細る可能性がある。STRCを100ドルまで押し上げるために、追加資本をどこまで投じるかが短期的な注目点となっている。
StrategyはSTRCの価格維持に向け、普通株「MSTR」とビットコイン保有分を主な財源として活用してきた。6月末から8月初めにかけては4回の取引で6916BTCを売却し、優先株に関する義務の履行と、その後のSTRC買い戻しに充てた。
また先週にはMSTR株453万株を売却し、純収益6億280万ドル(約904億円)を調達した。このうち1億5180万ドル(約228億円)を直近のSTRC買い戻しに、5070万ドル(約76億円)をSTRC配当の支払いに充てている。
一方で、ビットコインの買い増しも再開した。Strategyは約2カ月ぶりに3億6970万ドル(約555億円)を投じて4603BTCを取得し、総保有量は84万5050BTCに増加した。さらに3000万ドル(約45億円)は流動性の高い現金プールに別途積み増した。STRCの価格維持を進めながら、ビットコイン蓄積戦略も再び動かし始めた形だ。
ただ、足元ではSTRCの運用実態が当初の設計とずれている点も課題となっている。STRCは本来、投資家から調達した資金をビットコイン購入を含むバランスシート運用に充てる目的で設計された。ところが直近数カ月は、MSTRの発行代金と一部のビットコイン売却資金が、STRCの配当と買い戻しに優先的に振り向けられてきた。
Strategyがビットコイン購入を再開したのは、優先株スキームを支える財務面の仕組みが、双方の資金需要を同時に支えられると判断したためとみられる。
もっとも、STRCの本当の試練は100ドル到達後にある。今後、Strategyが買い戻しを減らす局面では、外部投資家が100ドル近辺でSTRCを消化し、価格を支える必要があるためだ。
市場環境も楽観できない。投資会社Striveは、年13%配当で営業日ベースの分配を行う優先株「SATA」の拡大を進めている。Metaplanetもビットコイン連動の収益商品を扱う流通基盤の拡充を進めており、認可証券プラットフォームのCeebo Securitiesを買収。ビットコイン連動収益商品の開発・流通に乗り出したほか、米国ではSuper League Enterpriseを通じて展開を広げている。
こうした動きにより、投資家は利回りや支払い頻度、資本構成の異なるビットコイン連動型の収益証券を比較しやすくなった。STRCは規模と機関投資家による採用実績で優位性を持つ一方、自社の買い支えが弱まった後も既存の投資基盤が100ドル水準を維持し、新規発行分まで吸収できるかはなお不透明だ。
Strategyの買い戻し縮小後も外部需要が下支えできれば、STRCは再びビットコイン購入の資金調達手段として機能し得る。逆に、発行体の支援が後退する局面で需要が揺らいだり、資金が競合商品へ流れたりすれば、100ドル到達そのものよりも、その後の価格維持の方が難しくなる可能性がある。