米Applied Materials(AMAT)は31日、AI半導体の性能を制約する最大の要因は演算能力そのものではなく、データ移動の効率にあるとの見方を示した。DRAMやHBM、先端パッケージングを含む半導体全域で3Dスケーリングを進め、性能向上と消費電力抑制の両立を目指す。
同日ソウルで開いたメディアブリーフィングで、ムクンド・スリニバサン副社長は「AIモデルの大規模化に伴い、消費電力は急速に増えている」と述べ、「この課題に対する業界の打ち手が3Dスケーリングだ」と強調した。
プロセッサの性能向上が続く一方で、メモリがそれに追いつかず、システム全体の性能が頭打ちになる「メモリウォール」が、AI普及に伴う新たな制約として意識されているという。
スリニバサン副社長は、AI半導体を構成する要素として、演算を担うロジック、データを保存・供給するメモリ、それらを近接配置するパッケージングの3つを挙げた。その上で、「ロジックではGAAやFinFET、メモリではDRAM積層型のHBM、パッケージングでは2.5D・3D構造と、各領域で3Dスケーリングが進んでいる」と説明した。
あわせて、半導体需要が供給を大きく上回る中では、生産能力の拡大もエコシステム全体で並行して進める必要があると指摘した。
Applied Materialsの2026会計年度第3四半期の売上高は91億2000万ドル(約1兆3680億円)で、前年同期比25%増だった。AI普及に伴う材料工学ソリューション需要の拡大が増収を支えたとしている。
同社は、先端ロジック工程で実績のあるトランジスタ技術や配線技術をDRAMにも展開し、速度とエネルギー効率の向上につなげる方針だ。代表例として、DRAM周辺回路トランジスタのソース・ドレイン領域に、ボロンをドープしたシリコンゲルマニウム(SiGe)を選択成長させるエピタキシャル工程を挙げた。
この工程で生じるチャネルひずみが、DRAMの性能向上と消費電力の低減に寄与するという。さらに、極端紫外線(EUV)露光の適用拡大に伴い、1チップ当たりのセル数や周辺回路トランジスタの集積度が高まり、銅配線層も増加している。
周辺回路トランジスタは、従来の高誘電率金属ゲート(HKMG)からFinFETへ移行する流れにある。スリニバサン副社長は「DRAMの性能向上は、先端ファウンドリやロジックで先行導入された材料工学技術を、どれだけ迅速に取り込めるかにかかっている」と述べた。
◆HBMはマイクロバンプからハイブリッドボンディングへ
HBMは、シリコン貫通電極(TSV)を用いてDRAMを垂直に積層し、帯域幅を高める方式だ。このためHBM向けDRAMは、TSVチャネル面積の影響でダイサイズが標準DRAMの最大2倍に達し、同じ容量を実現するには3〜4倍のウエハーが必要になるという。
スリニバサン副社長は「HBMがエネルギー効率を維持したまま拡張していくには、マイクロバンプベースの積層からハイブリッドボンディングへの転換が欠かせない」と述べた。
ハイブリッドボンディングはダイ間の間隔を実質的になくし、放熱性能を高める。入出力(I/O)密度は、1平方ミリメートル当たり100万個規模まで高められるとしている。
Applied Materialsは昨年、パートナー企業と共同で、ダイ・ツー・ウエハー方式のハイブリッドボンディングシステム「Kinex」を公開した。同社によると、工程間の待機時間を13時間から1時間に短縮できるという。
同社は2026年、先端パッケージング事業の売上高が70%超伸びると見込む。パネルレベル技術の強化策として、NEXXの買収も進めている。
メモリ、演算、接続を一体で最適化する取り組みも進む。共同光学パッケージング(CPO)は、電子チップと光学チップをパッケージレベルで統合し、光信号でデータを伝送する技術だ。
Applied Materialsは、310×310ミリ、510×515ミリに続き、最大600×600ミリ規格のパネルインターポーザー開発を目標に掲げる。従来の300ミリ円形ウエハーでは、角形インターポーザーの生産時に外周部のロスが大きく、ウエハー1枚当たり4〜5個程度しか取れないという。
同社は、パネルサイズが大きくなるほど生産できるインターポーザー数が増え、生産性向上とコスト低減につながると説明している。
スリニバサン副社長は「ロジックデバイスには2000以上、メモリデバイスには1200以上の工程ステップがあり、それぞれが相互に影響し合う」とした上で、「工程ごとに個別最適を追うのではなく、全体をつないで同時に最適化することがイノベーションの課題だ」と語った。
韓国企業との協業にも積極姿勢を示した。Samsung ElectronicsとSK hynixは、AppliedのEPIC(装置・工程革新商用化センター)の創設パートナーとして参加している。
京畿道オサンのApplied Collaboration Center Korea(ACC Korea)では、韓国の顧客と共同で技術開発や量産検証を進めている。Applied Materials Koreaのパク・グァンソン代表は「Samsung ElectronicsとSK hynixが米テキサス州テイラーなどにファブを拡張する過程でも、人材や技術支援に空白が生じないよう対応している」と述べた。