メモリメーカーが高帯域幅メモリ(HBM)とDDR5に生産能力を優先的に振り向けたことで、スマートフォンやPC向けの汎用DRAMの供給が細っている。汎用DRAMの価格上昇を受け、スマートフォンとPCの製造原価は2026年に15〜40%上昇する見通しで、コスト負担は部品・素材、原材料の各分野にも波及しそうだ。
業界関係者によると、スマートフォンとPCの1台当たり製造原価は2026年に最低15〜40%上昇する見通し。メモリメーカーがHBM向けに生産能力を移し、スマートフォンやPCに搭載される汎用DRAMの供給が減少したことが主因という。増加したコストは、消費者、セットメーカー、部品・素材メーカー、原材料サプライヤーのいずれかが負担せざるを得ない構図だ。
HBMはDRAMを多層に積層し、データ伝送路を広げたメモリで、人工知能(AI)サーバ向けを中心に使われる。汎用DRAMより高値で取引されるうえ、同じウエハーからHBMを生産する場合、積層チップの接合工程で不良が発生するため、得られるDRAM容量は大きく減る。
DS投資証券によると、HBMの1ビットを生産するには、汎用DRAMの3ビット分に相当するウエハーが必要になる。歩留まりを織り込んだ2027年の実質必要量は7倍に達するという。
2026年の主要DRAMメーカーのウエハー生産能力は、名目で月産200万5000枚。HBM向けの消費分を反映すると、実質的な生産余力は154万3000枚まで低下し、46万2000枚分がHBM向けに振り向けられる計算になる。
2026年のHBM出荷比率は、SK hynixが14%、Samsung Electronicsが12%になる見通し。この比率が高まるほど、汎用DRAMに回るウエハーはさらに減少する。
DDR5で始まった供給不足は、1世代前のDDR4にも波及している。メーカー各社がHBMとDDR5を優先し、採算の低いDDR4の生産を絞っているためだ。Morgan Stanleyは、DDR4価格が第3四半期に前四半期比で最大50%、第4四半期にさらに10%以上上昇すると予想した。
◆セットメーカーで単価引き下げ圧力が強まる
DDR4は現在も、法人向けデスクトップ、キオスク、産業用システムで広く使われている。価格負担の大きいDDR5を避け、旧プラットフォームを選んでいた需要も、今回の値上がりの影響を受けることになった。旧世代DRAMの不足が、AIサーバ以外の市場にも広がった格好だ。
需給バランスは、2026年が5.0%の供給不足、2027年が1.9%の供給不足になると見込まれている。不足は長期化する見通しで、DS投資証券は2026〜2035年の実質供給能力の伸びが年平均11.9%にとどまる一方、DRAMのビット需要は年平均約13%増えると推定した。
SK証券は、メモリ価格が3桁%上昇し、APや通信モジュール、基板も最低20〜30%、高い場合は50%以上上昇すると見通した。上昇幅が最も大きいのはメモリだという。
さらに、ディスプレイやカメラは高仕様化が進み、内外装材は金属価格、付随資材は化学材料価格の上昇を受けており、コストを削る余地は乏しいと説明した。
部材価格の上昇は、完成品価格にも波及しつつある。TrendForceは、HBMとウエハー価格の上昇を受け、NVIDIAのサーバ向けGPU価格が2027年第1四半期以降に10〜20%引き上げられる可能性があるとみている。
もっとも、上昇した原価をそのまま販売価格に転嫁するのは容易ではない。中国需要が低迷し、世界のセット製品の出荷量は第1四半期からマイナス成長となった。Samsung ElectronicsのGalaxyは2026年に販売減が見込まれ、中国メーカー各社は20〜35%の減産を計画しているという。
消費者に転嫁できないコストは、最終的にサプライヤー側へしわ寄せされる。SK証券は、セットメーカーが部品・素材の単価引き下げ(CR)を一段と強く求めざるを得ない構造だと分析した。部品・素材メーカーが吸収し切れなければ、その負担は原材料サプライヤーまで下流に広がる見通しだ。