画像=SpaceXのガスタービン部品内製化に関するX投稿のキャプチャ

イーロン・マスク氏は、SpaceXがガスタービンの中核部品であるブレードとベーンの自社鋳造に乗り出す方針を明らかにした。AIデータセンターの拡大で電力需要が急増するなか、供給制約の緩和につなげる狙いがある。

米TechCrunchが8月30日付で報じたところによると、テキサス州バストロップにある非公開の鋳造施設は、ガスタービン向けブレードとベーンの生産を目的としたものとみられる。

マスク氏は30日、X(旧Twitter)への投稿で、SpaceXとTeslaがそれぞれ年100ギガワット(GW)規模の太陽光生産能力をできるだけ早期に構築していると説明した。一方で、太陽光発電を補完し、立ち上がり期の需要増を支えるには、今後数年間は天然ガスが必要になるとの認識も示した。

その上で、天然ガスタービンの生産で最大のボトルネックになっているのはブレードとベーンの鋳造工程だと指摘した。SpaceXがこの工程を内製化できれば、ガスタービンの稼働開始を最大18カ月前倒しできるとしている。

背景には、AI業界で深刻化する電力不足がある。NVIDIAの最新Blackwellチップでなお数カ月単位の納期が続くなどGPU不足が解消しない一方、電力系統の接続制約もデータセンター増設の新たな壁となっている。

国際エネルギー機関(IEA)は、世界のデータセンターによる電力消費が2030年までにおおむね2倍に増えると予測する。ガスタービン大手のGE Vernovaも、AIインフラ需要の高まりを受け、生産能力は2030年ごろまで実質的に埋まっているとしている。

このため、Amazon、Google、Meta、OpenAI、Microsoftなどの大手テック企業は、系統接続を待たずにデータセンター近隣へ自前のガス発電設備を設ける形で電力確保を進めている。ここ数年、風力や太陽光を優先してきた企業の間でも、データセンターの早期稼働を優先し、天然ガス火力を活用する動きが広がっている。

もっとも、ガスタービン用ブレードの生産は技術的な難度が極めて高い。The Informationによると、最も高温になる部位のブレードは約1648.9~1982.2度で運転される。これは材料に使われる金属合金の融点を約800度上回る水準だ。

こうした高温環境に耐えられるのは、ブレード内部の冷却チャネル、遮熱コーティング、そして精密な鋳造技術によるためとされる。とりわけブレードは、微細な継ぎ目が生じないよう、真空炉の中でゆっくり成長させた単結晶として製造する必要がある。

この工程を工業規模で実現できる企業は世界で4社に限られ、生産余力もほぼ使い切られているという。ジェットエンジン向けブレードも難工程として知られるが、発電用ガスタービンのブレードはサイズが大きく、欠陥なく量産する難易度はさらに高いとされる。

SpaceXがこの内製化に成功すれば、これまで少数の供給業者に依存してきたAIインフラ向けの中核製造能力を、マスク氏率いる企業群が直接押さえることになる。資金力があっても製造基盤を持たない競合にとっては、短期間で追随しにくい差につながる可能性がある。

ただ、実際にどの程度の生産能力を確保できるのか、量産規模がどこまで立ち上がるのかは、なお見極めが必要だ。

ガスタービンの導入が広がれば、大気汚染を巡る議論が一段と強まる可能性もある。排出物質を巡っては既に連邦訴訟が起きており、健康影響に関する研究も進んでいる。

メンフィスでは、xAIが2024年からColossusデータセンター向け電源としてガスタービンを運用してきた。全米黒人地位向上協会(NAACP)は、xAIが一部のガスタービンを、連邦法で求められる許可や汚染防止措置なしに運用したとして、繰り返し問題提起している。

NAACPは、ガスタービンからスモッグの原因物質やホルムアルデヒドなどの有害化学物質が排出される可能性があると指摘する。こうした汚染物質は、喘息や呼吸器疾患、一部のがんとの関連も懸念されているという。

施設周辺には、もともと産業汚染の負担が大きい地域社会がある。メンフィス大学の研究チームも、分析には限界があると断った上で、データセンターの稼働によって大気汚染が「わずかに悪化した」との見方を示した。

メンフィスは、ガスタービンを巡る対立が表面化した一例にすぎない。バージニア州の「データセンター・アリー」でも、データセンター向け電力としてガスタービンを活用する動きに対し、環境・健康面の懸念が示されている。

Piedmont Environmental Councilが委託した研究では、米環境保護庁(EPA)の健康影響モデル「COBRA」を使い、あるデータセンターで常時稼働するガスタービン8基の排出物質による影響を分析した。

その結果、排出物質の影響は複数の郡にまたがり、250万人超に及ぶ可能性があると推計した。さらに、年間で3.4~6.5件の追加的な早期死亡と、5300万~9900万ドルの健康関連被害コストが生じる可能性があると試算している。

もっとも、これらは実際の被害額や死亡者数ではなく、排出量を基にモデルで推計した数値だ。

SpaceXによるガスタービン部品の内製化は、AIデータセンター向け電力をより早く確保するための新たなサプライチェーン戦略として注目を集めそうだ。一方で、天然ガス発電の拡大は大気汚染や地域住民の健康リスクを巡る議論も伴い、AIインフラ拡張では電力調達と環境対応を同時に問う局面が強まっている。

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