国際通貨基金(IMF)は、ステーブルコインの普及拡大を巡り、国際協調による規制整備が必要だと警鐘を鳴らした。新興国では通貨代替や資本フローの変動、為替相場の不安定化を通じて、通貨主権が損なわれるリスクがあるとしている。
8月31日、CoinPostによると、IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は28日、米ワイオミング州で開かれたジャクソンホール経済政策シンポジウムで講演し、ステーブルコインとトークン化は越境決済をより迅速かつ低コストにする可能性がある一方、それに対応する国際的な規制協調が不可欠だと述べた。
ゲオルギエバ氏は、地政学的な分断が深まるなかで金融システムは一段と流動化しているとの認識を示した。トークン化やステーブルコインは国際金融の柔軟性を高める半面、金融リスクの波及も速めかねないとし、規制とマクロ経済政策の重要性が増していると強調した。
とりわけ新興国は、ステーブルコイン拡大の影響を受けやすいと指摘した。ステーブルコインが銀行の金融仲介機能を過度に損ない、脱税などに悪用されたり、通貨代替を促したりする恐れがあると警告。資本規制に依存する国では、既存の統制手段の実効性が損なわれかねないとの見方を示した。
その上で、IMF加盟国の約4分の1がなお資本規制に依存していると説明した。こうした規制が弱まれば、通貨代替、資本フローの変動拡大、為替相場の不安定化、通貨主権の低下といったリスクに直面し得るとし、各国の中央銀行に対しては、健全な国内銀行システムの維持と外貨準備の強化を求めた。
ステーブルコイン発行国の責任にも言及した。準備資産を供給する国、特に米国も、マクロ経済政策上の規律から逃れられないと指摘。経済学者ケネス・ロゴフ氏の分析を引用し、ドル連動型ステーブルコインは、米国外で流通する約15兆ドル規模のドルを吸収する新たな経路になり得ると説明した。
一方で、ステーブルコイン需要が発行国の財政調達コストを一部押し下げる可能性があるとしても、それは責任あるマクロ経済政策の代替にはならないと強調した。国債需要の裾野を広げる効果は見込めても、財政健全化に向けた調整そのものは避けられないとの認識を示した。
主要国の国債利回り上昇にも触れた。米国、フランス、日本の10年国債利回りは、それぞれ2007年、2008年、1996年以降で最も高い水準にあると指摘。利回りの上昇は他国の調達コストにも波及し、財政面の圧力を強める可能性があると述べた。
金融政策については、中央銀行は物価安定を最優先すべきだと改めて訴えた。財政問題を支えるために政策金利を適正水準より低く抑えたり、新たな資産購入プログラムを動かしたりする、いわゆる「金融政策カウボーイ」になってはならないと発言。財政問題は金融政策ではなく、歳出削減や増税などの財政調整で対処すべきだとの考えを示した。
今回の発言は、ステーブルコインを越境決済の効率化やドル流通拡大の手段とみる見方が広がる一方で、金融安定や通貨主権へのリスクを警戒する声も強まるなかで示された。