豪州の研究チームは、倒壊した建物や洞窟など救助隊員が立ち入りにくい場所での活用を想定し、カメラと超小型の注射装置を搭載したサイボーグゴキブリ「Paraborg」を開発した。生体昆虫の高い移動能力を生かしたバイオハイブリッドロボットで、被災者への応急支援につなげる狙いがある。
TechRadarが8月29日(現地時間)に報じたところによると、University of Queensland(UQ)とUniversity of New South Wales(UNSW)の共同研究チームは、豪州北部に生息する大型の穴掘りゴキブリに電極と軽量電子機器を取り付けたParaborgを開発した。研究成果は国際学術誌「Advanced Science」に掲載された。
Paraborgは周囲の映像をカメラで送信し、操作者が遠隔で目的地点まで誘導する仕組みだ。役割の異なる個体も用意しており、別の個体には遠隔作動式の自動注射装置を搭載し、液体薬剤を届けられるようにした。研究チームによると、装置の装着時にはゴキブリを麻酔し、装置を外した後も一般個体に近い寿命を維持できたという。
概念実証では、目標から15センチ以内の位置で注射を試みた場合、成功率は最大95%に達した。一方、複数の地点を経由して目標まで移動し、姿勢を安定させたうえで注射まで完了する一連の任務の成功率は72%だった。実験では実際の患者ではなく、シリコン製の標的を使って注射装置の作動可能性を検証した。
UQの博士課程研究員、ハイ・ナン・レ氏は「目標地点に正確に接近した後、注射できるほど昆虫の姿勢を安定させることが最大の課題だ」と説明した。研究チームは今後、カメラや環境センサーを担う個体と、医療機器を運ぶ個体を組み合わせるなど、役割を分けた複数のサイボーグ昆虫を同時に投入する案も検討している。
こうした技術には消防当局も関心を示している。ニューサウスウェールズ州消防救助局のティム・ハシオティス警視は、「救助隊員が入れない空間で被災者を見つけ、応急支援まで提供できるなら、都市型の捜索救助に新たな手段をもたらす可能性がある」と評価した。
もっとも、実際の災害現場への投入には課題も残る。通信が不安定で地形も複雑な倒壊現場での実証に加え、安全性の確保や規制当局の承認が必要だ。研究チームは、研究資金の確保や現場試験が進めば、今後5〜10年以内に実際の救助現場でサイボーグ昆虫を活用したい考えだ。