Bitcoin Coreとハードウェアウォレットを接続する標準インタフェース「HWI(Hardware Wallet Interface)」が、事実上の終息局面に入った。暗号資産メディアのCryptoSlateは30日(現地時間)、HWIが新規デバイスや新機能の受け入れを停止する一方、後継候補の「BHWI」は実運用での導入例が確認されていないと報じた。
HWIのメンテナーは18日、GitHub上で、HWIは長年にわたり保守モードにあり、事実上1人で維持してきたプロジェクトだと説明した。その上で、MuSig2関連の作業を除き、今後は新規デバイスと新機能を受け入れない方針を明らかにした。現在の作業が完了した後には、おそらく最後となるリリースを実施し、代替となる後継ツールが整うまで最小限の保守を続けるとしている。
HWIは、ウォレットソフトとハードウェアウォレットの橋渡しを担う。Ledger、Trezor、Coldcard、BitBox、Jadeなどの機器を認識し、公開鍵の取得、受取アドレスの表示、部分署名済みビットコイントランザクション(PSBT)の送信と署名処理などを仲介してきた。後継候補とされるBHWIはRustで実装され、HWIのコマンド出力との互換性維持を目指している。
もっとも、移行の道筋はなお固まっていない。HWIは現時点でアーカイブ化されておらず、終了時期も定まっていない。今回の告知でも、既存の対応機器が使えなくなるとか、利用者のビットコインが危険にさらされるといった説明は示されていない。
一方で、当面のしわ寄せはウォレット開発側に及びそうだ。これまでHWIをパッケージ化したり、コマンドライン経由で呼び出したりすることで、機器やOS、ベンダーごとのプロトコル差分を吸収してきた開発チームは、代替手段への移行を自ら進める必要がある。
HWIはPython製のライブラリ兼コマンドラインツールで、ベンダーごとに個別実装が必要だったハードウェアウォレット連携を、単一のインタフェースとして提供してきた。当初の狙いはBitcoin Coreにハードウェアウォレット対応を加えることにあったが、HWI自体をコアに組み込むのではなく、「external signer(外部署名者)」との境界を介して接続する方式が採用された。この仕組みは、2021年公開のBitcoin Core 22.0からサポートされている。
メンテナーによれば、Pythonという言語特性上、Bitcoin Coreのリリースバイナリで採用される再現可能ビルドと相性が悪く、HWIをコアに同梱することはできなかった。ただ、この分離構造があったことで、external signerの仕様を満たす別プログラムへ置き換えやすくなった面もあるという。
ただし、コマンド互換だけで移行が完了するわけではない。ウォレット事業者には、代替ツールの新たなパッケージングや対応機器・機能の再検証に加え、今後のファームウェア更新やOS変更に伴う保守を誰が担うのかという課題も残る。保守主体の整理を含め、移行対応はウォレット開発側に重くのしかかる見通しだ。