イ・ジェミョン大統領が蔚山のAIデータセンター発足行事で半導体チップを視察している。写真=大統領府

政府は、半導体好況で見込まれる追加税収を原資に、将来投資向けの「未来対応基金」を創設する方針だ。少なくとも100兆ウォン(約11兆円)規模に達するとの見方もある一方、法案では素材・部品・装置分野への支援が明示されておらず、半導体景気の恩恵を関連産業にどう波及させるかが論点として浮上している。

企画予算処が公告した「未来対応基金の設置および運用に関する法律」制定案は、28日に立法予告を終えた。付則では、公布日から施行すると定めている。

法案には、新税の創設や税率引き上げに関する条項は盛り込まれていない。このため、これまで取り沙汰されてきた、いわゆる「棚ぼた税(超過利潤税)」とは性格が異なる。ただ、基金財源の相当部分は半導体業績の改善に伴う税収増で賄われる見通しだ。

基金新設の方針は、7月の国家財政戦略会議で示された。イ・ジェミョン大統領は同会議で、「AI革命がもたらした半導体の大好況により、前例のない追加税収が発生する」との見通しを示していた。

企画予算処も21日の第1回財政運用戦略協議会で、「半導体の追加税収を潜在成長率の反転に向けた戦略投資財源として活用するため、基金を設ける」と説明した。来年の国税収入が当初見通しの412兆ウォン(約45兆3200億円)を大きく上回り、500兆ウォン(約55兆円)を超えるとみられることから、基金規模は少なくとも100兆ウォンに達するとの分析も出ている。

これに対し企画予算処は、基金規模について「財政経済部の公式な国税収入見通しが必要であり、追加税収の規模は現時点では明らかにできない」としている。

制度設計としては、半導体景気による増収を半導体以外の将来投資にも振り向ける枠組みとなる。もっとも、国債償還など従来の歳入剰余金の充当順序を経ずに基金へ積み立てる方式については、立法審議で論点となる可能性がある。

現時点で、基金財源の確保に当たり特定の産業や企業を明示する条項はない。法案では、基金財源の基準を内国税収入とし、所得税、法人税、相続税・贈与税、付加価値税、個別消費税(たばこを除く)、印紙税、証券取引税の7税目を組み入れた。

半導体企業に追加課税をしなくても、業績拡大に伴って法人税収が増えれば、その分が内国税総額を押し上げ、基金財源につながる構図だ。

財政経済部の「2026年6月国税収入現況」によると、6月までの内国税累計は196兆7000億ウォン(約21兆6370億円)で、前年同期比26兆1000億ウォン(約2兆8710億円)増えた。税目別の増加額は、所得税が10兆4000億ウォン(約1兆1440億円)、証券取引税が5兆2000億ウォン(約5720億円)、付加価値税が4兆9000億ウォン(約5390億円)、法人税が4兆3000億ウォン(約4730億円)の順で、この時点では法人税の寄与はまだ大きくない。

財政経済部は、半導体関連の営業利益や成果給は税収にまだ十分反映されておらず、8月の法人税中間納付(予定納税)の実績から順次反映されるとみている。Samsung Electronicsの第2四半期営業利益は89兆4924億ウォン(約9兆8440億円)、SK hynixは60兆5426億ウォン(約6兆6600億円)で、いずれも四半期ベースで過去最高だった。

これに伴う法人税が下半期の税収に計上されれば、基金収入に占める半導体由来の追加税収の比重は一段と高まる見込みだ。

法案が定義する「追加税収」も、こうした局面を念頭に置いたものだ。追加税収は、当初の内国税歳入予算額から内国税歳入のトレンド値を差し引いた金額を指す。トレンド値は、2年前の決算額に12年間の年平均増加率を2年分適用して算出する仕組みだ。

単年度の見積もり誤差によって生じる超過税収とは異なり、半導体好況のように長期トレンドを上回る増収分を切り出す考え方といえる。

現行の国家財政法では、歳入剰余金は地方交付税・地方教育財政交付金の精算、公的資金償還基金への拠出、国債償還の順に使うと定めている。未来対応基金が新設されれば、追加税収はこの手続きを経ずに基金へ繰り入れられる。

業界関係者は、この点について「財源をより柔軟に使うための設計だ」と話している。

基金の使途を巡っては、現在の問題認識とのずれを指摘する声もある。未来対応基金の創設は、半導体好況の効果が市場全体に十分波及していないとの診断を背景に打ち出されたが、法案の内容は既存サプライチェーンの補強よりも新技術投資に軸足を置いているためだ。

その問題意識を示すのが、国会予算政策処の分析だ。同処によると、半導体産業の付加価値誘発係数0.57のうち、間接効果は0.17にとどまり、自動車の0.39、船舶の0.42の半分にも満たない。波及が滞る主な地点として、素材・部品・装置分野を挙げている。

また、半導体製造用の装置・材料の輸入依存度は0.334で、製造業平均の0.233を上回った。国内の関連産業に回る比率が小さいことを示す数値といえる。成果給の恩恵を受ける層も、従業員300人以上のIT業種従事者約23万人に限られ、全体の1.1%にとどまった。

国会予算政策処は、素材・部品・装置の国産化率引き上げに向けた研究開発支援、産学連携の強化、納入単価の適正化を通じた大企業と中小企業の共生を対策として提示している。

ところが、法案には、波及効果の弱さの要因として指摘された素材・部品・装置分野を、未来対応基金の用途として明記する条項がない。一方、成長動力勘定には、先端AI開発、フィジカルAI、小型モジュール炉(SMR)、宇宙航空など7大技術への投資を盛り込んだ。地方勘定については、住民生活インフラの拡充と農漁村支援を用途として定めている。

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