Teslaは9月3日、米オースティンで2人乗りのロボタクシー専用車「Cybercab(サイバーキャブ)」の公開イベントを開く。
米メディアElectrekが現地時間8月24日に報じた。Teslaは「Exclusive Access: Cybercab」と記したポスターでイベントを告知しており、ロボタクシーの乗車イベントには当選者のうち一部を招待する。参加できない利用者向けにはライブ配信も実施する。
招待対象は、ロボタクシーの利用回数が多いユーザーと、郵送で応募した当選者。当選者の発表は8月26日で、参加条件は21歳以上。参加可否の回答期限は8月30日としている。Teslaは今回のイベントを「自動運転の未来を体験する機会」と位置付けている。
もっとも、告知文言に比べると内容は限定的との見方が強い。Cybercabは、Teslaがオースティンで1年以上運営してきた既存のロボタクシーサービスに、ハンドルのない2人乗り車両を加える色彩が濃い。
Cybercabは既存のロボタクシーアプリから呼び出せる見通しだ。運行中のModel Yと併用するか、既存車両を置き換える形で投入されるとみられている。
車両は新しくなる一方、自動運転システムは従来と同じだ。Cybercabには、Model Yのロボタクシーに採用しているのと同じFull Self-Driving(FSD)のソフトウェアスタックを搭載するという。
このソフトウェアは先週、オースティンで運転席が無人の状態のまま複数のボラードに衝突した車両にも使われていたとされる。
Teslaは2025年6月にオースティンでロボタクシーサービスを始めた。ただ、開始から1年がたった現在も運営規模は小さいとみられている。
独自取材や外部コミュニティの追跡結果によると、任意の時点で実際に稼働している無監督車両は20〜30台程度。以前に約25台でピークをつけた後は、横ばい、もしくは減少傾向にあるという。
Teslaは7月の決算発表で、累計の無監督走行距離が約38万マイル(約61万2000km)に達したと明らかにした。一方で、配備車両数はそれ以上でも、実際に走行している車両は一部にとどまると説明している。
規模の面では競合との差が大きい。Waymoは約3000台の無人車両を運用し、週50万件超の有料乗車をこなしている。
累計の乗客向け走行距離は2億2000万マイル(約3億5400万km)を超える。Teslaの累計無監督走行距離はWaymoの0.2%にも満たず、運行台数もWaymoの1拠点分にも及ばない規模だという。
こうした状況を踏まえると、Cybercabを既存の車両群に加えても、競争環境が大きく変わる可能性は小さいとの見方がある。十分な検証を終えていない小規模サービスに、新たな車種を1つ追加するにすぎないという評価だ。
Cybercabの主な利点として挙がるのは効率性だ。2人乗りを前提に設計されており、Teslaは電費を1マイル当たり約165Wh(約103Wh/km)としている。これはTesla製EVで最も高効率な水準だという。
バッテリー容量は48kWh、車両重量は3113ポンド。1マイル当たり250〜280Wh(約155〜174Wh/km)程度のModel Yより軽く、空気抵抗も小さいとされる。自社で車両群を運営する事業者にとっては、1マイル当たりのエネルギーコストを引き下げられる点が実利になる。
ただ、この効率性が意味を持つのは、乗車人数が2人以下の場合に限られる。Model Yは最大5人乗りだが、Cybercabはハンドルもペダルもない2人乗りで、荷室スペースも最小限とされる。
同乗者が3人以上いる場合や、荷物、ベビーカー、車いすを利用するケースでは、実質的なアップグレードとは言いにくい。従来Model Yでこなしていた移動を、より小型の車両で置き換えるだけに近いとの指摘もある。
要するに今回の変更は、短距離移動で1マイル当たり数セントのエネルギーコスト削減と引き換えに、車内空間を削るトレードオフだという見方だ。しかも前提となるのは、なお大規模な検証を経ていない自動運転システムである。
ポスターにある「Exclusive Access」についても、1年以上規模が拡大していない同じサービス、同じソフトウェア、同じ運行エリアで、形の異なるTesla車に乗れる権利にすぎないとの指摘が出ている。
1マイル当たり165Whという数値自体は効率性の成果といえるが、プログラムの最大のボトルネックは電費ではなく自動運転の完成度だという分析もある。Cybercabだけでこの課題を解決するのは難しい、という見立てだ。
焦点となるのは今後の運行台数だ。9月3日のイベントから1カ月後も無監督車両が20〜30台規模にとどまるようなら、停滞するプログラムを前進しているように見せるためのプロモーションにすぎなかったとの評価は避けにくい。
車両が新しくなっても、2025年6月以降に指摘されてきた問題は残る。路上を走る車両数がなお十分ではなく、実運用に耐える準備が整ったことを示す材料も乏しいというのが現状だ。