Kakaoは8月21日、KakaoTalkにAIを組み込み、利用者リクエストの約半分を端末上で処理する「オンデバイス優先」の戦略を明らかにした。軽量モデルとモデルルーティングを組み合わせることで、サーバー側の推論コストを最大90%削減する考えだ。
同日開いた会社分割に関する記者懇談会で、KakaoAIの代表に内定しているキム・シナ氏は、KakaoAIの競争力は「オンデバイス優先」のAIアーキテクチャにあると説明した。オンデバイスAIは、データを外部サーバーに送らず、端末内で処理する方式を指す。
同氏によると、利用者リクエストの約半分は自社の軽量モデル「Kanana Nano」が端末上で即時処理し、より複雑なリクエストのみをサーバー側のAIモデルや専門エージェントに振り分ける。
この振り分けを担う技術として、Kakaoは「AIコンダクター」も開発している。リクエストの複雑さや難易度を見極め、最適なモデルへ割り当てるオーケストレーション技術だという。
キム氏は、オンデバイス優先の処理と知能型のモデルルーティングを組み合わせることで、性能を維持しながらサーバー推論コストを最大90%削減できると説明した。利用者が増えても、推論コストが比例的に膨らみにくい構造を目指すとしている。
そのため、サーバー側モデルの小型化も進める。大規模モデルの知識を蒸留して軽量化し、海外の大規模モデルの10分の1規模で同等水準の文脈理解性能を実現しているとした。
蒸留は、大規模モデルが学習した知識を小規模モデルに移す手法。オンデバイスモデルはすでに海外モデルを上回る性能を確保しており、自社トークナイザーと軽量化技術によってメモリ使用量やバッテリー消費を抑えつつ、「Kanana」とKakaoTalkに適用しているという。一方、この日の説明では、こうした主張を裏付けるベンチマークスコアや比較対象モデルは示されなかった。
Kakaoは自社モデル開発も継続する方針だ。海外の大規模モデルの多くがB2Bを主眼とするのに対し、自社サービスに最適化され、利用者の文脈を理解しながらコストも抑えられるモデルが必要だとしている。
外部AI事業者との連携では、持ち分提携などの大型ディールよりも、エージェント生態系の拡大を軸に据える。既存のKakao生態系の事業者を、Model Context Protocol(MCP)とエージェント間通信(A2A)のパートナーとして取り込む考えを示した。
■AIのDAU目標は2000万人
KakaoAIが描くKakaoTalkの将来像は、複数のAIが行き交う「窓口」だという。利用者が自然言語で意図を伝えると、エージェントが必要なサービスをつなぎ、実行し、結果まで提示する形へ進化させる構想だ。
KakaoTalk内には汎用アシスタントを基盤として置き、必要に応じて領域別の専門エージェントを追加する構成を想定する。
キム氏は、利用者の文脈を踏まえ、KakaoTalk内でサービス連携から実行までを一連の流れとして完結できる点を競争力として挙げた。今回の分割により、KakaoAIは子会社管理の役割をKakaoXに移し、AI、広告、コマースに経営資源を集中する。
このコスト構造は、KakaoAIが掲げる2030年の財務目標の前提にもなっている。2030年まで年平均20%の売上成長を続け、売上高6兆ウォン以上、EBITDA2兆ウォン以上の達成を目標に据えた。
営業利益率は30%以上、自己資本利益率(ROE)は25%以上を目指す。
収益の柱は、エージェント型広告、エージェント型コマース、サブスクリプションの3本とする。AIが利用者の意図を把握して商品を提案し、購入につなげる新たな広告商品を投入するほか、検索広告にも参入し、2030年までに検索広告市場で5%超のシェア獲得を目指す。
コマースでは、A2Aを基盤に外部の垂直サービスと連携し、取引手数料を新たな収益源に育てる方針だ。AI関連売上高は2028年に全体売上高の2桁比率まで引き上げ、2030年には1兆ウォン超を計画している。
2030年にAIのデイリーアクティブユーザー(DAU)2000万人を目指す根拠についても説明した。キム氏は、現在、グループチャットで日常的に能動的な会話を交わす利用者が3000万人いると明らかにした。
そのうえで、「Kanana in-talk」で確認されたDAU/MAU比率60〜70%を当てはめれば、保守的な前提を置いても2000万人を超えると説明した。AI利用者は非利用者に比べ、滞在時間が50%以上長い点も根拠として挙げた。
Kakaoは、KakaoTalkの滞在時間も2030年までに現在より50%以上伸びるとみている。エージェントとのやり取りが積み上がるほど滞在時間が延び、広告とコマースの売上拡大余地も広がるとの見方だ。
投資資金は自社のキャッシュフローで賄う。キム氏は、既存の転換社債の規模は小さいとしたうえで、EBITDAと投資収益率を基準に投資を実行すると述べた。KakaoAIが創出するEBITDAは、計画中の設備投資(CAPEX)を大きく上回る見通しだとしている。