米国で、トランプ大統領一族が関与するステーブルコイン発行体World Liberty Financial(WLFI)の銀行免許申請が条件付きで承認された。WLFIはドル連動型ステーブルコイン「USD1」を発行しており、承認を受けてUSD1の用途を広げる方針を示した。Coinpostが25日、報じた。
今回の承認は、銀行免許そのものよりも、申請主体の性格と足元の政策環境を背景に注目を集めている。民主党系議員の間では、大統領一族と関係を持つ企業が金融認可を受ける過程を巡り、便宜供与への懸念が浮上した。WLFIは今月、条件付き承認後に、その狙いはUSD1の拡大にあると説明している。
こうした議論の背景には、米通貨監督庁(OCC)による認可の増加がある。OCCによると、トランプ政権発足後の約20カ月で承認された新規銀行免許は22件に達し、直前5年間の累計を上回った。承認先の多くは、フィンテック企業と暗号資産関連企業だった。
デジタル資産業界の銀行免許需要は、申請動向にも表れている。ジョナサン・グールドOCC長官は20日、ワイオミング・ブロックチェーン・シンポジウムで、新規銀行免許申請の約60%がデジタル資産関連の事業計画を含むと明らかにした。トランプ政権発足後18カ月で受理した申請は40件に上り、このうち23件が暗号資産関連事業を盛り込んでいたという。
グールド長官は申請の増加ペースにも言及した。申請件数はバイデン政権下の4年間と比べて8倍に増えたとし、審査中の案件でも決済用ステーブルコインを事業計画に組み込む動きが広がっていると説明した。銀行免許が従来の金融業務にとどまらず、ステーブルコイン決済インフラと結び付きながら再編されつつある構図がうかがえる。
ステーブルコイン規制の整備も具体化している。グールド長官は、発行体に100%の準備資産保有を求めるジニアス法について、最終規則を11月までに公表し、来年から発行体の認可申請を受け付ける見通しを示した。同法は2025年7月に制定され、2027年1月に適用が始まる予定だ。
ジニアス法では、時価総額500億ドル(約7兆5000億円)を超える発行体に年次監査を義務付ける。一方、暗号資産業界全体を包括するクラリティ法の先行きはなお不透明だ。トランプ大統領の利益相反問題に加え、ステーブルコイン報酬の扱いを巡る調整が難航しているためだ。グールド長官は「クラリティ法がいつ、どのような形で成立するかは分からない」と述べたうえで、「現時点であるのはジニアス法であり、これを実行しなければならない」と語った。
米金融規制の焦点は、包括立法よりも先に執行可能なステーブルコイン規則へ移りつつある。WLFIの条件付き承認は、個別企業への認可にとどまらず、デジタル資産企業の銀行業界参入とステーブルコインの制度的な組み込みが同時に進んでいる兆候ともいえる。もっとも、大統領一族と関係する企業が含まれる以上、今後も認可手続きや政治的な攻防を巡る議論は続きそうだ。