AIは総雇用より先に、労働市場への新規参入に影響を及ぼしていることが示された。写真=Shutterstock

スタンフォード大学の研究で、AIの影響が大きい職種ほど、22〜25歳の若年層の雇用が大きく落ち込んでいることが分かった。影響は解雇の増加ではなく、主に若手採用の鈍化として表れている。

米ITメディアのArs Technicaが24日(現地時間)に報じた。スタンフォード大学の経済学者らは2026年8月版の報告書で、22〜25歳の雇用が、AIの影響が小さい職種に比べて、影響の大きい職種でより大きく減少したと指摘した。

この報告書は、昨年公表した「Canaries in the Coal Mine? Six Facts About the Recent Employment Effects of Artificial Intelligence」の更新版に当たる。研究チームは、前年に確認された若手人材の雇用低迷が一時的な現象ではなく、継続的に広がっているとみている。

AIの影響が最も大きい職種群では、22〜25歳の雇用水準が、影響の小さい職種群の同年代に比べて19%低かった。前年の格差は13%だった。

分析には、人事管理企業ADPの匿名化された高頻度の給与データを用いた。既存研究の労働市場影響指標とAnthropicの経済指数を組み合わせ、職種ごとのAI影響度を測定したという。

Anthropicの指数は、Claudeの利用事例を基に、各職種で日常業務にAIがどのように使われているかを反映している。

労働市場全体でみると、AIの影響が大きい仕事と小さい仕事の間で、相対的な雇用水準に大きな差は見られなかった。ただ、22〜25歳に限ると状況は異なっていた。

研究チームによると、2022年以降、AI影響度が上位40%に入る職種では、22〜25歳の雇用が約11%減少した。一方、AI影響度が低い下位60%の職種では、同期間に総雇用が10%増加した。

雇用悪化は、解雇の増加よりも新規採用の鈍化として現れた。研究チームは、解雇や自発的な離職が増えたというより、AIの影響を受けやすい分野で若手の採用率が低下したことが主因だとみている。

また、賃金の下落よりも、仕事そのものの減少が目立つ傾向も確認された。

職種ごとの差も大きい。AnthropicはAI活用を、人の仕事を置き換える「自動化」と、人の生産性を高める「補完」に分類している。

会計士や監査人、受付係、案内事務員は、自動化の影響が大きい職種に分類された。これに対し、最高経営責任者(CEO)や看護師は、補完的な活用が多い職種として挙げられた。

研究チームは、自動化中心のAI活用は労働代替と整合的である一方、補完的な活用は雇用の停滞、または増加と結び付きやすいと説明している。

さらに、若手人材ほど、形式化された知識に依存する業務で脆弱になりやすい可能性があると分析した。教育や教科書、文書化された手順で教えられる知識はAIが代替しやすい一方、実務経験や反復的な業務経験、メンタリングを通じて蓄積される暗黙知は、熟練人材に結び付きやすいという見方だ。

検証では、O*NET職業データベースの学歴要件を代理指標として用いた。その結果、形式知の比重が高い職業ほど若手雇用の伸びが鈍く、逆に暗黙知の比重が高い職業では、中堅・高年次人材の雇用増加が速いと分析した。

学歴が緩衝材として働く可能性も示された。大卒比率が高い職種では、AIの影響が大きい職種と小さい職種の間で雇用格差が相対的に小さかった。

一方、大卒比率が低い職種では、AIの影響が小さい仕事は増える一方で、影響が大きい仕事は減る傾向が、より鮮明に表れた。

研究を主導したエリック・ブリニョルフソンは、現在の傾向について「既存の労働者の仕事は維持されても、新たに労働市場に入る世代の機会は減っていく方向を示している」と警鐘を鳴らした。

同氏は、初級職に対する影響は実在し、継続的かつ拡大していると指摘したうえで、総雇用が保たれていても、キャリアを始める人たちの入口が静かに閉じていくような労働市場のほうが懸念されると述べた。

今回の結果は、AIが労働市場全体を直ちに置き換えているという見方とは異なる。一方で、企業がAIを優先的に導入する領域では、若手採用が先に減少していることが明確になった。

今後、AI導入が自動化中心で定着するのか、それとも熟練人材を補完する方向へ移るのかが、若年層雇用を左右する重要な変数になりそうだ。

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