オーストラリアでGenesis「GV70 Electrified」を約4年にわたって使用してきたオーナーが、走行距離4万4000km分の実測データを公開した。長距離走行時の充電、消費電力量、充電費、維持管理、車載機能までを含む内容で、プレミアム電気SUVの長期利用の実態が浮かび上がった。
EV専門メディアのCleanTechnicaが24日付で伝えたところによると、オーストラリア在住のデイビッド・ボール氏は2023年にGV70 Electrifiedを購入し、これまでに約4万4000kmを走行した。
ボール氏がEVを選んだ最大の理由は、航続距離と荷室容量だった。買い替え時にはハイブリッド車も検討したが、バッテリーEVより維持管理の負担が大きい車は望まなかったという。旅行の機会が多いため、十分な積載性と長距離性能も重視した。
比較対象だったTesla Model Yも3度検討したが、ガラスルーフやシート素材、シートベルトの装着感が合わなかった。一方、GV70 Electrifiedはエンジン車に近いインテリア構成で、物理ボタンやダイヤルを備えている点が購入の決め手になったという。
購入前にはディーラーが車両を自宅に持ち込み、キャンプ用品や旅行荷物の積載を実際に試せたことも判断材料になった。ボール氏は、必要な荷物をすべて積み込めたことに満足したとしている。
車両価格は高水準だった。ボール氏が購入したGV70 Electrifiedは13万8000豪ドルで、比較対象だったTesla Model Y Long Rangeは10万3000豪ドル、BMW i4は11万4000豪ドルだった。
初期負担は大きかったものの、長期的には見合う価値があると評価した。購入判断には、5年間の無償コンシェルジュサービスも影響したという。定期点検は年1回で、車両を自宅で引き取り、代車を提供したうえで返却する方式だとしている。
長距離利用に対する満足度も高い。ボール氏夫妻はGV70 Electrifiedで、メルボルン往復の約4500km規模の旅行を2回行った。
超急速充電器を利用できる場合、充電時間はおおむね10〜20分程度だった。食事やドライバー交代の時間に合わせて充電計画を組んだという。ボール氏は、充電インフラの整備状況と充電速度はいずれも改善していると評価した。
消費電力量は気温や走行環境によって差が出た。最初の長距離旅行時の気温は約30度だった一方、2回目は最高気温が12度まで下がった。長距離走行時の平均消費電力量は100km当たり約23kWh、日常利用では同約19kWhだった。4万4000km全体では、平均消費電力量は100km当たり19.6kWhに集計された。
ボール氏は、移動時間や費用、消費電力量を記録し、次の充電地点も事前に計算しているという。
充電費の抑制には、自宅の太陽光発電設備が大きく寄与した。メルボルン往復の長距離旅行2回で急速充電に使った費用は、合計で約1100豪ドルだった。一方、残る約3万6000kmの走行にかかった充電費は、約410豪ドルと見積もっている。
付属の家庭用充電器はガレージ中央に設置しており、別のEVであるKona Electricにも使用している。自宅には屋根設置型の太陽光発電設備とTesla Powerwallも備える。
運転支援や利便機能についても評価は高い。ドライバーごとにシートやステアリング、サイドミラー、ラジオ設定などが自動で切り替わり、共同利用時の設定の手間を減らせたという。
ワンペダル走行も、慣れた後は使用頻度の高い機能になった。家族で長距離移動する機会が多いことから、マッサージシートや静粛性、拡張現実(AR)ベースのナビ表示も利点として挙げた。
安全性も選定理由の1つだった。土木エンジニア出身のボール氏は、過去に道路安全政策の研究に関わった経験があり、安全性を重視したと説明した。GV70 Electrifiedはアクティブ/パッシブセーフティの両面で求める基準を満たしていると評価している。
EVへ切り替えた背景には環境面の理由もあった。化石燃料への依存を減らすためEVを選んだといい、それまで使用していたMazda 6 Wagonは子どもに譲り、Kia Cerato GTはKona Electricに置き換えた。今後はエンジン車の役割がさらに縮小するとみている。
一方で、オーストラリアでのGV70 Electrifiedの販売台数は多くない。ボール氏は、路上であまり目立たない点をむしろ利点と捉えている。外観はエンジン車のGV70に近く、フロントの閉じたグリルや排気口がない点を除けば、EVだと気付きにくいという。
販売台数が少ないため、事故時のボディ部品調達では不利になる可能性があるとの懸念も示した。ただし、既存のGV70に近いデザインであることは、部品面で利点になり得るとも評価した。
今回の事例は、プレミアム電気SUVが長距離旅行や自宅充電環境の下でどのような体験を提供できるかを示している。平均消費電力量100km当たり19.6kWhという実績と、家庭用太陽光発電を活用した充電環境は、EVを評価する際に初期購入価格だけでなく、長期的な運用コストまで含めて見る必要があることを示す例といえそうだ。