シリコンバレーのAI業界で、開発競争の激化に伴い、従業員が休暇を取りにくい職場環境が議論を呼んでいる。制度上は有給休暇が整っていても、技術進化の速さによって休暇中に取り残されるとの不安や、長時間労働の常態化が取得の障壁になっているためだ。
米ITメディアのBusiness Insiderによると、きっかけは、OpenAIで政策研究責任者を務めたマイルズ・ブランドリッジ氏が、24日(現地時間)にXへ「AI研究所によっては、他社より休暇に前向きに見える」との趣旨を投稿したことだった。
この投稿には、OpenAIやAnthropicの従業員が反応した。Anthropicの従業員が、英国のエディンバラ・フリンジ・フェスティバルで2週間の休暇を過ごしたと明かすと、OpenAIの従業員が「自分も休むべきというサインのようだ」と応じた。
OpenAIの研究者レオ・ガオ氏は、「仕事が生活のすべてを侵食しがちだった」とした上で、「その点でOpenAIは自分に合っていた」と投稿した。このほか、従業員同士が休暇の取り方を巡って冗談を交わす場面も見られた。
議論はGoogle DeepMindなど、他のAI組織にも広がった。最近、学界からDeepMindに移ったAGI経済学責任者のアレックス・イマス氏は、「まだ休暇という概念を学んでいるところだ」と冗談めかして語ったという。
ブランドリッジ氏は、この話題を持ち出した狙いについて、「結局のところ、休息の重要性を強調したかった」と説明した。
もっとも、制度面で休暇が極端に不足しているわけではない。米労働統計局によると、2025年時点で情報産業の労働者の95%が有給休暇の提供を受けていた。Business Insiderが引用したAlliantの2025年技術業界福利厚生調査でも、企業が付与する有給休暇(PTO)は平均19.8日だった。
問題は、休暇制度の有無ではなく、実際に休めるだけの心理的余裕があるかどうかだ。AI業界ではモデルや製品の投入が相次ぎ、技術動向を追い続けること自体が大きな負担になっているとの声が出ている。
ある業界関係者は、その状況を「勢いを増し続けるホースから水を飲むようなものだ」と表現した。加えて、一部のテック企業では午前9時から午後9時まで週6日働く、いわゆる「996」のような高強度の勤務文化も見られた。
OpenAIのサム・アルトマンCEOも2018年、業界の雰囲気について「ワークライフバランスの観点で良い模範ではない」と語ったことがある。
AI開発競争が加速するなか、各社にとっては人材獲得だけでなく、従業員が持続的に働けるよう休息の文化を整えることも課題として浮上している。