AIの活用で天気予報の作成は大幅に高速化している。しかし、予報精度を決めるのはモデルの性能だけではない。現在の大気の状態をどこまで迅速かつ正確に把握できるかが、依然として予報の精度を左右する重要な要素だ。
Rainbow AIの最高経営責任者(CEO)、アレクサンダー・マトベエンコ氏は24日(現地時間)、ITメディアのTechRadarへの寄稿文で「気象予報の出発点は現在の大気状態だ」と指摘した。レーダー、衛星、地上観測所、気象観測気球、航空機などから得られるデータは、それぞれ解像度や更新頻度、誤差の特性が異なる。こうした観測データを既存の予報情報と組み合わせて現在の大気状態を推定するのがデータ同化で、初期値となる解析データが不正確だったり古かったりすれば、どれほど高性能な予報モデルでも精度には限界があるという。
特に予測が難しいのが、短時間で発生・発達する雷雨だ。レーダー画像から降水域の移動方向を算出する従来手法では、雨雲の急な発生や分裂、合体といった変化を十分に捉えきれないことがある。同じ都市の中でも地域によって降水や風の状況が大きく異なるため、ドローン運航や空港、太陽光発電、物流など、きめ細かな気象情報を必要とする分野ほど影響は大きい。
世界気象機関(WMO)は、現時点から6時間先までの詳細な地域予報を「ナウキャスティング(Nowcasting)」と定義している。この領域では、観測データを継続的に取り込み、数分単位で予報を更新できる能力が重要になる。
AIは、従来より少ない計算資源で予報を高速に生成できる。欧州中期予報センター(ECMWF)のAI予報システム「AIFS」も、複数の指標で従来の物理モデルを上回る性能を示している。ただ、その出発点は依然として数千万件の観測データを組み合わせた解析データだ。ECMWFがAIFSと物理ベースの「IFS」を併用しているのも、このためだ。
AI時代でも、正確な天気予報の鍵は、より賢いモデルだけにあるわけではない。最新かつ正確な観測データを、どれだけ速く確保できるかが重要になる。