米財務省が、連邦準備制度に預託している政府一般口座(TGA)の残高を、長期国債の買い戻し原資に活用する案を検討している。規模は約9500億ドルに上り、実現すれば長期金利の安定に加え、ビットコイン相場にも影響を与える可能性がある。
ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、財務省はこのTGA残高を長期国債の買い戻しに充てる案を精査している。
今回の検討は、財務省が今月、長期国債バイバックの規模を従来の2倍超に拡大すると明らかにした後に浮上した。財務省は19日、10年超20年債と20年超30年債を中心とする1回当たりの買い戻し規模を、従来の20億ドルから40億ドル超に引き上げると発表した。
あわせて、9月9日の初回実施を含む四半期ごとの買い戻し計画も示した。ただ、その時点では拡大に必要な資金をどのように確保するかについて、具体策は示していなかった。市場では、短期国債の発行で資金を賄うとの見方が広がっていた。
スコット・ベセント米財務長官は、この政策を「Treasury Twist」と表現した。短期国債を発行して資金を調達し、その資金で長期国債を買い戻す手法を指す。
もっとも、市場の受け止めは分かれた。発表直後に上昇した国債価格はその後下落に転じ、利回りにも再び上昇圧力がかかった。長期国債の買い戻し拡大だけでは、長期金利の上昇圧力を十分に抑え込めないとの見方が反映されたとみられる。
一方、暗号資産市場はより敏感に反応した。ビットコインは19日の発表後に上昇へ転じ、週間では約23%上昇。25日には7万9000ドル前後まで持ち直した。
市場では、長期金利の低下期待がビットコイン相場を支えたとの分析が出ている。30年国債利回りが19年ぶりの高水準圏から低下し、利息収入を得られる長期国債の相対的な魅力が薄れたことで、供給量が限られるビットコインに資金が向かったという見方だ。
資金流入も確認された。米国のビットコイン現物ETFには1週間で約6億5000万ドルが純流入した。さらに数十億ドル規模の空売りポジションの清算も重なり、ビットコインの上昇幅を押し上げた。長期金利低下への期待とショートカバーが同時に作用した格好だ。
ただ、米国債市場ではなお慎重な見方が残る。20日には国債売りが再び強まり、10年国債利回りは4.697%まで上昇した。長期国債バイバックの拡大だけでは金利上昇を抑えにくいとの判断が意識された。LPL Financialの債券戦略責任者ローレンス・ギラム氏は、今回の拡大策を「一時的な弥縫策」と評した。
消費関連でも重しとなる材料が出た。同日に公表されたWalmartの決算では、売上高の伸び率が6年ぶりの低水準となった。とくに実店舗を中心に消費者の支出姿勢が慎重になっている様子がうかがえた。Walmartのジョン・デビッド・レイニー最高財務責任者(CFO)は決算説明会で、ガソリン価格の上昇が消費者負担を増やしていると説明した。
こうしたなか、TGAを実際に活用するかどうかは、米国債市場だけでなく暗号資産市場にとっても重要な変数になりつつある。TGAは、米政府が税収などで確保した資金を管理する口座で、連邦準備制度に預託される。財務省は政策運営に応じてTGAの目標残高を調整しており、ジョー・バイデン前政権では5500億〜6000億ドルを目安に運用していた。
現時点では、財務省がTGAを実際に買い戻し原資として使うかどうか、使う場合にいつからどの規模で実施するかは決まっていない。
今後の焦点は、TGA資金の活用が長期金利の安定につながるかどうかだ。長期金利が落ち着けば、リスク資産への投資心理が改善し、ビットコインへの資金流入が一段高を支える可能性がある。
逆に、バイバック拡大後も長期金利の上昇基調が続けば、ビットコインの上昇モメンタムが鈍る可能性もある。米財務省の次の資金運用判断に、金融市場と暗号資産市場の双方が注目している。