米企業のAI投資が、欧州との差をさらに広げる見通しだ。Oxford Economicsは、米企業のAI向けハードウェア・インフラ投資が2027年末までに2021年比で実質40%増加すると予測した。ユーロ圏は同12%増にとどまる見込みで、米欧の投資格差は一段と拡大する可能性がある。
Cryptopolitanが24日付で伝えた。新型コロナウイルス禍以降、米企業は欧州企業を大きく上回るペースでAI分野に資金を投じており、その流れが今後も続くとの見方が強い。ユーロ圏のAI関連投資の伸びは、同じ期間でも限定的にとどまる見通しだ。
生成AI投資でも米国の優位は際立つ。Stanford AI Indexによると、米国の民間AI投資は中国の23倍に達する。
もっとも、米中の実際の差は民間投資額ほど単純ではない可能性もある。中国政府は過去23年間で国内AI産業に約1840億ドルを支援してきたと推計されている。民間資金では米国が圧倒的でも、政府支援を含めれば競争構図はより複雑になる。
世界全体のAI投資も急拡大している。企業のM&A、上場、少数出資、民間投資を含むAI関連資金の総額は、2013年以降で約40倍に膨らんだ。
2025年の世界のAI投資額は5816億9000万ドルと、前年比129.9%増を記録した。このうち民間投資は3446億6000万ドルで最大の比率を占め、2024年比で127.5%増えた。
米国の投資拡大は、ビッグテック各社の大型投資計画とも連動している。Google、Meta、Microsoft、Amazonは2026年だけで、AIインフラに7250億ドル超を投じる構えだ。
一方、国際決済銀行(BIS)などの主要機関は、AIの収益性が市場の期待を下回った場合、投資ブームの反動が生じる可能性があると警告している。米国の投資拡大はAI支出の増勢に強く支えられているだけに、収益化に失敗すれば脆弱さが表面化しかねないとの指摘だ。
欧州内では、現在の格差が固定化するとは限らないとの見方もある。Bank J. Safra Sarasinのチーフエコノミスト、Carsten Junius氏は、米国のAI投資が現在の規模のまま恒常的に続くことはないとの認識を示した。
ただし、欧州が先端技術での差を縮められなければ、生活水準で米国に見劣りする状態が続く可能性があるとも指摘した。
投資格差の背景には、資金力だけでなく産業構造の違いもある。米国は大手テック企業の層が厚く、ベンチャーキャピタルや民間投資家の裾野も広い。加えて、これら企業はデータセンターや先端半導体、AIインフラに再投資できる巨額のキャッシュフローを持つ。
これに対し欧州は技術市場が分散しており、米国の主要AI企業に匹敵する規模の企業は相対的に少ない。AIシステムの構築・導入コストが上がるほど、こうした差はより大きく作用する可能性がある。
規制環境も変数だ。欧州連合(EU)は2024年、AIが生み出す偽情報の拡散などのリスクに対応するため、AI法を導入した。
ただ、厳しい規制がイノベーションを阻害するとの批判も根強い。投資規模で後れを取る中、規制負担まで増せば、欧州企業の対応がさらに遅れるとの懸念が出ている。
AI活用はすでに企業活動全般へ広がっている。2025年の調査では、対象企業の88%がAIを導入しており、70%は少なくとも1つの事業領域で生成AIを活用していることが分かった。
AIエージェントはなお初期段階にあるが、生成AIが日常サービスや業務現場へ急速に浸透していることは明らかだ。
消費者側の体感価値も高まっている。生成AIが一般利用者にもたらす実質的な価値は、年率換算で54%増加した。
2026年初時点で米国の消費者にもたらされる年間便益は1720億ドルとなり、1年前の1120億ドルから拡大した。ソフトウエアが無料、あるいはほぼ無料で利用できる環境でも、利用者中央値ベースの効用は3倍に伸びた。
こうした流れの中で、AI投資は実験段階を超え、企業の基幹業務を支える競争力へと位置付けが変わりつつある。先行投資した企業が生産性向上や自動化、高度なAIツールへのアクセスで優位に立つ可能性は高く、米欧の経済格差がさらに広がるとの見方も出ている。