KakaoがKakaoAIとKakaoXへの分割を打ち出したことで、株価を巡る評価軸にも変化が生じている。これまで低評価の背景とされてきた複合企業ディスカウントの是正期待に加え、今後はKakaoXに対するNAVディスカウントと、KakaoAIの成長プレミアムをどこまで織り込めるかが焦点となる。
従来のKakaoは、KakaoTalkを軸に金融、コンテンツ、モビリティなど複数事業を抱えており、個別事業の価値が株価に反映されにくいとみられてきた。国内外の証券会社のリポートでは、部分合算価値評価(SOTP)ベースでみたカカオグループの潜在価値は34兆2000億ウォンと試算された一方、直近3カ月の平均時価総額は16兆8000億ウォンと、その半分程度にとどまっていた。Kakaoはこうした乖離を分割の理由の一つに挙げ、事業を切り分けることで各事業がより適正に評価されやすくなるとみている。
もっとも、市場の初期反応は冷静だった。分割を発表した21日の株価は前日比7.49%安の3万5800ウォンで取引を終え、時価総額は1日で1兆ウォン超減少した。24日までには、証券会社11社のうち5社が目標株価を引き下げ、このうちSamsung SecuritiesとMeritz Securitiesは投資判断も「買い」から「保有」へ引き下げた。
市場の論点は、分割によって複合企業ディスカウントが解消するかどうかだけではなく、KakaoXにどの程度のNAV割引がかかるのか、KakaoAIにどこまで成長性を織り込めるのかという2点へ移りつつある。
◆KakaoX、複合企業ディスカウントの先にNAV割引という新たな課題
KakaoXには、KakaoBank、KakaoPay、KakaoMobility、Kakao Entertainmentなど主要子会社の持分や投資資産が残る。会社側はKakaoXを「未来価値投資会社」と位置付けるが、証券業界は持株会社に近い目線で見ている。
事業価値よりも保有子会社持分や投資資産の比重が高まるため、証券各社はそれらの価値を積み上げたうえで一定のディスカウント率を適用し、KakaoXの企業価値を算出している。韓国市場では、NAVをそのまま株価に反映させず、一定の割引をかけて評価するケースが多く、一般に「持株会社ディスカウント」と呼ばれる。
Samsung SecuritiesはKakaoXに30%の持株会社ディスカウントを適用し、企業価値を10兆8000億ウォンと評価した。ディスカウント率が50%まで拡大した場合、Kakao全体の適正株価は3万3000ウォンまで低下し得るとも試算している。Meritz Securitiesも、KakaoXの主要子会社持分の実効価値を約11兆1000億ウォンと見積もったうえで、韓国の持株会社には通常30〜60%のディスカウントが適用される点を株価の重荷として挙げた。複合企業ディスカウントの解消を狙った分割が、KakaoXでは別の割引要因を浮き彫りにした格好だ。
これに対し、KakaoXは対応方針を示している。キム・ドヨン代表内定者は21日の説明会で、KakaoXの主要指標として「NAV成長」と「ディスカウント率の最小化」を提示した。保有資産の価値を高めると同時に、市場が付与する割引率の圧縮を目指す考えだ。
SK Telecom・SK Squareとの比較についても、特定の先例をそのまま踏襲するのではなく、KakaoX独自の資本配分モデルを構築していく方針を示した。
もっとも、資産の分散は評価が分かれる。特定子会社への依存度が低い半面、短期間で企業価値を押し上げる中核資産が見えにくいとの指摘もある。SK hynix持分がNAVの98%を占めるSK Squareと異なり、KakaoXの資産は金融、コンテンツ、モビリティに分散しており、新たな成長エンジンをどう生み出すかが課題となる。
KakaoXの企業価値は、保有資産価値の拡大と市場ディスカウント率の低下が同時に進むかどうかに左右される公算が大きい。子会社価値の上昇や新規投資の成果でNAVを積み上げる一方、投資資産の売却や株主還元策を通じてディスカウント率を引き下げられるかが問われる。
◆KakaoAI、問われる収益化 AIプレミアム獲得へ実績が必要
一方のKakaoAIは、KakaoXとは異なる評価局面にある。KakaoTalkとAI、広告、コマース事業を集約することで、従来の広告・コマース企業ではなくAI企業としてより高いバリュエーションを獲得できるかが分割のポイントになる。
キム・ドヨン代表内定者は、KakaoAIがAI企業としてのアイデンティティを確立できれば、証券業界がAI事業に適用する30〜40倍程度のPERが認められる可能性があると説明した。現在のKakaoのPERは約21.9倍。ただ、市場では、その水準を正当化するだけの実績は現時点で十分に見えていないとの見方が強い。
Kakaoは、KakaoAIの売上高を約2兆8000億ウォンから2030年に6兆ウォン超へ拡大し、AI事業だけで1兆ウォン超の売上を確保する目標を掲げている。AIの日次アクティブユーザー(DAU)2000万人も目標に据えた。ただ、証券業界では、エージェンティックコマースや広告、サブスクリプションといったAI収益モデルが、実際にどこまで売上へ結び付くかはなお見極めが必要とみている。
収益化のタイミングも課題だ。チョン・シナ代表は年初の決算説明で、2026年をAI収益化元年と位置付けたが、その後の決算説明では本格的な収益化の時期を2027年以降へ後ろ倒しした。
◆分割後の株価を左右するのは、Xの資本配分とAIの収益化
証券業界の見方を整理すると、分割後の評価ポイントは両社で明確に異なる。KakaoXは、子会社の企業価値向上や新規投資の成果を株主還元につなげ、NAVディスカウントの縮小を実現できるかが問われる。KB Securitiesは、明確な資本配分原則と積極的な株主還元策が必要だと評価した。
KakaoAIについては、KakaoTalkのユーザー基盤をAIサービス利用へつなげ、それを広告、コマース、サブスクリプション売上へ転換できるかが焦点となる。AI企業として高いバリュエーションを得るには、その裏付けとなる収益成長を示す必要がある。
Samsung Securitiesは、分割後のKakaoの合算企業価値は、KakaoAIの再評価余地とKakaoXのディスカウント幅の間で決まるとみている。現時点ではKakaoXのディスカウント要因の方が相対的に見えやすい一方、KakaoAIのプレミアムは今後の事業成果次第で変動し得るという見立てだ。
会社分割が株価の再評価につながるには、KakaoAIのリレーティング効果がKakaoXのディスカウント負担を上回る必要がある。KakaoAIには成長プレミアムの裏付けとなる収益化の進展が、KakaoXには資本配分と株主還元を通じたNAV拡大とディスカウント管理が、それぞれ求められている。