Microsoftの社員が、給与やボーナス、株式報酬に加え、AIツールの利用額まで匿名で共有し、社内のAI活用の実態が浮かび上がった。AI利用額の中央値は300ドル、最高は月2万8000ドルに達した一方、利用額と評価・昇進の間に明確な相関は見られなかった。
Business Insiderが24日付で報じたところによると、米国の社員約600人が匿名で作成した社内スプレッドシートには、基本給、昇給率、現金ボーナス、株式報酬の内訳が記載された。今年は新たに「月間AI利用額」の項目が加わり、社内ツールで把握した過去28日間のAI利用コストも共有された。Microsoftの広報担当者は、AI利用を追跡するツールはまだ初期テスト段階にあると説明した。
約600件の回答のうち、AI利用額を記入したのは約350件だった。報告額の中央値は300ドルで、最高額はMicrosoftの顧客・パートナーソリューション部門の社員が記載した月2万8000ドルだった。一方で、月数ドルにとどまる回答もあり、組織によってAI活用の度合いに大きな差があることもうかがえる。
ただ、AIを多く使う社員ほど報酬が高いといった傾向は確認されなかった。AI利用額とボーナス評価、昇給率、昇進可能性の間に目立った相関は見られず、利用量の多さが高評価や昇進機会に直結していることを示す材料もなかった。
今回の資料は、Microsoftの報酬実態の一端を示す異例のデータともいえる。同社はAIインフラに数千億ドル規模を投じる一方で、投資成果を左右するエンジニアや研究者の確保を巡り、Meta、Google、OpenAI、Anthropicなどと人材獲得競争を繰り広げている。年次昇給やボーナス以上に規模が大きい株式報酬は、こうした人材をつなぎ留める中核的な手段と位置付けられている。
もっとも、この資料は公式集計ではない。賃金透明性を高める目的で社員が自主的に匿名作成したもので、全社の実態を示すデータとは言い切れない。Microsoftの総従業員数は6月30日時点で22万3000人に上り、約600件の回答、うちAI利用額の記載があった約350件はいずれも限定的なサンプルにとどまる。同社は7月にも大規模な人員削減を実施している。
年俸が高い社員や勤続年数の長い社員ほど、こうしたスプレッドシートへの回答率が低い傾向があるともされ、公開された給与水準が全社員平均を下回っている可能性もある。昨年もMicrosoftの社内給与ガイドラインが報じられ、米国のエンジニアリング職や研究職で新規採用時に提示される一般的な給与水準が明らかになっていた。
今後の焦点は、こうしたAI利用状況の追跡が人事評価や予算配分に結び付くかどうかだ。現時点では利用規模のばらつきが大きく、報酬との直接的な関連も確認されていない。Microsoftがこのデータを生産性指標へ発展させるのか、それともコスト管理にとどめるのかが注目される。