画像=Samsung ElectronicsのV10 BV-NAND構造図

Samsung ElectronicsとSK hynixが、高帯域幅メモリ(HBM)の次を見据えた新たなメモリ戦略を打ち出した。AIの計算量が増える中、従来のHBMだけでは帯域と容量を同時に伸ばしにくくなっており、Samsung ElectronicsはAIアクセラレータ上にHBMを垂直積層する3D構造「zHBM」を、SK hynixはHBMと高帯域幅フラッシュ(HBF)を組み合わせる階層接続をそれぞれ提示した。

業界によると、両社はHBMの性能を単純に積み増す従来路線では限界があるとみて、新たな構造の検討を進めている。Samsung Electronicsは、メモリとAIアクセラレータの距離を縮めてデータ移動のボトルネックを抑える構えだ。一方のSK hynixは、特性の異なるメモリを階層的に組み合わせ、システム全体の容量と効率を高める戦略を採る。

Samsung Electronicsが示したzHBMは、AIアクセラレータ(xPU)の横にHBMを並べる従来方式から転換し、アクセラレータの上部にHBMを垂直に積層する構造だ。HBMはDRAMを積層して高帯域化したメモリで、AIや高性能コンピューティングで広く使われている。

同社によれば、zHBMを適用したインターフェースシステムは、第8世代HBM5と比べて性能が最大8倍、電力当たり性能が最大3倍、熱抵抗は半分以下になる。あわせて、V-NANDにシリコン貫通電極(TSV)を組み合わせた「zNAND-O」と、400層超の第10世代「V10 BV-NAND」も公開した。

一方、SK hynixはSanDiskと共同で、HBFの初の標準規格を発表した。HBFは、DRAMを積層するHBMとは異なり、NANDフラッシュを垂直積層して構成するメモリで、高速なHBMと大容量SSDの中間に位置する新たなメモリ階層と位置付ける。

規格では、NANDダイを8段または16段で積層する2構成を想定し、最大容量は512GBと定義した。帯域は3つのグレードで毎秒0.4〜3.0TBをサポートし、プロセッサとの接続にはオープン規格のUCIeを採用する。

この規格は、オープンな協業体であるOCPを通じて公開される。コンソーシアムにはGoogleとTenstorrentが参加している。

物理限界が構造転換を促す

両社がHBMの延長線ではなく構造そのものの見直しに動く背景には、既存方式が物理的な限界に近づいているとの認識がある。Samsung ElectronicsのDRAM開発室で常務を務めるキム・ギョンリュン氏は、「FMS 2026」の基調講演で3Dアーキテクチャ「zHBM」を紹介し、「顧客は10倍のメモリ性能を求めているが、HBM4やHBM5のような既存の2.5D構造には限界がある。これを打開する唯一の突破口が3D垂直積層構造だ」と述べた。

アクセラレータとメモリを同一平面に配置すると、データの往復距離が長くなり、その分だけ時間と電力のロスが増えるというのが同社の説明だ。

こうした問題意識は、米国で開かれている半導体設計学会「Hot Chips 2026」でも共有された。会場では、HBMの消費電力と拡張性の限界が主要テーマの1つとなった。

HBMは高性能コンピューティング向けに広く普及しているが、電力効率と容量拡張の両面で既存設計が限界に近づいており、構造的な革新が必要だという見方が強まっている。

Samsung ElectronicsはHot Chips 2026で、zHBMによる電力効率の改善効果も示した。GPU1基にHBM4基を組み合わせる構成では、zHBMは従来のHBM4Eと比べてDRAM電力を100W削減できるという。

同社は、このI/O電力の削減について、アクセラレータとメモリの間にある直列信号変換(SERDES)構造をなくした効果だと説明した。削減できた電力は、演算性能の向上や放熱余力の確保に振り向けられるとしている。

供給不足も構造変更を後押ししている。キウム証券は、2027年のHBM需要の伸び率が56%となり、供給の伸び率50%を上回ることで需給逼迫が強まり、HBM4の市場平均価格は65%上昇すると予測した。

性能向上のためにHBMの搭載量を増やす手法は、供給量とコストの両面で壁に直面しつつある。実際、搭載量の見直しも出始めている。

ユジン投資証券は、NVIDIAが次世代アクセラレータ「Rubin Ultra」のHBM搭載量を引き下げたのは、HBMの供給がアクセラレータの生産計画に追い付かなかったためだと分析した。

SK hynixがHBFを前面に押し出す理由もここにある。AIが回答を生成する際に参照する一時データを、高価なHBMではなくNAND側の階層に移せば、同じコストでより多くのデータを扱えるためだ。

ユジン投資証券は、DRAMとHBMの不足が深刻になるほど、こうしたデータ移管が広がり、NAND需要もあわせて増えるとみている。

もっとも、アプローチが異なるだけに、両社が解決すべき課題も違う。Samsung Electronicsは、発熱の大きいアクセラレータ上にメモリを載せる構造上、放熱制御の負担が重くなる。

同社はこの点を踏まえ、従来のHBMよりDRAMの積層段数を減らす設計を適用した。

一方のSK hynixには、標準を採用する企業を増やす課題がある。共同開発先のSanDiskは、初のHBFメモリダイの設計を終えており、2027年にAI推論向けの初期サンプルを顧客に供給する計画だ。

その後、2027年初めにはHBFを適用したエンタープライズSSDの量産に入る方針も示した。

今後は、DRAM自体が特定企業向けに最適化された製品として開発されるとの見方もある。ユジン投資証券は、3D積層DRAMの開発トレンドによって、DRAMは汎用品から、特定の半導体と共同開発するカスタム品へと移行していくと分析した。

開発初期からメモリメーカーの関与が必要になり、いったん決まった供給元を切り替えるコストも高まるため、特定半導体に対応できる供給企業は限られていくと予測している。

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