ドナルド・トランプ米大統領が、ビットコインを含む暗号資産の政府保有拡大を検討していることが分かった。ただ、数十億ドル規模で公開市場からビットコインを買い付けるような施策を実行するには、議会による明示的な権限付与が必要になるとの見方が強い。
CryptoSlateは20日(現地時間)、現行法の下でも行政府が連邦政府の暗号資産保有を増やす手段は一部残されていると報じた。一方で、米財務省が数十億ドルを投じて市場でビットコインを直接購入できるようにする制度的な裏付けは、現時点では存在しないという。
論点となっているのは、ビットコインとそれ以外の暗号資産で法的な扱いが異なる点だ。トランプ大統領が2025年に署名した行政命令では、財務省と商務省に対し、納税者の追加負担を伴わない「予算中立」の形でビットコインを確保する方策の策定を指示した。
これに対し、ビットコイン以外の資産については、追加の行政措置や立法がない限り、没収や民事上の金銭制裁を通じてのみ備蓄に組み入れられる仕組みに制限されている。Ethereum、XRP、Solanaなどを保有対象として広げるには、追加の行政命令、もしくは新たな立法が必要になる。
もっとも、追加の行政命令が出されたとしても、議会の権限がなくなるわけではない。既存の行政命令でも、実施は「適用される法令」と「利用可能な歳出予算」に従うべきだと明記している。
たとえ予算中立の手法であっても、財務省が合法的に確保できる資産や財源が必要であり、それを活用する法的権限も欠かせない。
現時点で行政府が使える現実的な手段としては、没収資産、寄付、納税が挙げられる。刑事・民事の没収手続きが最終的に確定したビットコインは「戦略的ビットコイン準備金」に、ビットコイン以外の資産は「デジタル資産備蓄」に組み入れられる。
米政府は2026年1月、Helixミキサー事件に関連して、4億ドル超の暗号資産とその他資産の法的所有権を確保した。
ただし、賠償金の支払い義務や法執行上の義務、没収関連法規の適用によって、財務省が実際に保有できる数量は減る可能性がある。事件の発生時期や没収規模も予測しにくく、目標数量や日程を定めた定例の買い付けプログラムとして活用するのは難しい。
寄付も選択肢の1つだ。ビットコインは連邦税法上、財産として扱われるため、財務省は寄付されたビットコインを連邦政府の保有枠組みに組み入れることができる。
さらに、追加の行政命令で寄付資産を公式な財源として明記すれば、ビットコイン以外の暗号資産についても一定の受け入れルートが開かれる可能性があるという。
ビットコインを連邦税の納税手段として認める案も検討対象に含まれる。米内国歳入庁(IRS)は現在、デジタル資産による納税を受け付けていないが、財務省は制度整備を通じてビットコイン納税の可否を検討できるとされる。
ただ、こうして受け取ったビットコインをそのまま戦略的ビットコイン準備金に組み入れられるかどうかは、別途判断が必要になる。
一方、公開市場でビットコインを大規模に買い付ける案は、議会が定めた現行法と抵触する可能性が高い。財務省がEthereumやSolana、XRPなどビットコイン以外の資産を売却し、その資金を購入原資に充てる案も同様だ。
連邦財政法では、政府収入は原則として財務省に帰属し、別途の法的根拠がない限り、それを再びビットコイン購入に振り向けるのは難しいとされる。
2026年に提出された「米国準備金近代化法案」は、ビットコイン以外の資産を売却・交換・転換してビットコイン準備金を増やす、または連邦債務の削減に充てることを認める内容だ。ただし、この法案もまだ成立には至っていない。
結局のところ、トランプ大統領の構想を定期的な連邦ビットコイン買い付けプログラムにつなげるには、議会が買い付け権限と財源手当ての仕組みを明示的に与える必要がある。BITCOIN Actのような法案が成立すれば、年20万BTCを5年間買い付けるプログラムも可能になり得る。
今回の論点は、米政府の暗号資産保有拡大が大統領の意思だけでは進みにくいことを改めて示した。没収や寄付、納税による流入と、公開市場での買い付けでは法的性格が異なり、実際の買い付けプログラムは議会承認の枠組みに左右される見通しだ。