ビットコインが20日、7万3000ドル台まで上昇した。16日以降の上昇率は約15%に達し、この局面では暗号資産市場全体で30億ドル超のショートポジションが清算された。米ビットコイン現物ETFへの大幅な資金流入も重なり、相場は一気に切り上がった。ただ、市場関係者の間では、この上昇が持続するにはショート清算だけでなく、新規の現物需要が不可欠との見方が強い。
米メディアのDecryptによると、今回の上昇局面では暗号資産のショートポジションが30億ドル(約4500億円)超が清算され、ビットコインとしては少なくとも2021年以降で最大規模のショート清算となった。
市場では、米財務省による長期国債の買い入れや、ドナルド・トランプ米大統領がビットコイン購入の可能性に言及したことに加え、大規模なショートスクイーズが重なったことを急騰の背景に挙げる声が多い。19日には米国のビットコイン現物ETFに5億1700万ドル(約776億円)が流入し、5月以降で最大の1日当たり純流入を記録したことも投資家心理を支えた。
一方、専門家は上昇の持続にはショート清算に加え、新たな現物需要の流入が必要だと指摘する。CryptoQuantのリサーチ責任者、フリオ・モレノ氏は、現物需要の増加が続けばマクロ要因による初期的な押し上げの後も上昇基調を維持し得るとする一方、現時点では指標上なお弱気局面にあり、急騰後に調整が入る可能性もあるとの見方を示した。
モレノ氏は主要指標として、ビットコインの365日移動平均線である8万3000ドル近辺と、CryptoQuantの損益指数「ブルスコア」を挙げた。強気相場入りを確認するには、損益指数が365日移動平均線を上抜く必要があるが、現時点ではそのシグナルは出ておらず、ブルスコアもなお弱気圏にとどまっているという。
テクニカル面の改善を指摘する声もある。Nansenのシニアリサーチアナリスト、ニコライ・ソンデガード氏は、ビットコインが6万9000ドル前後の200日単純移動平均線を回復し、地合いが改善したと説明した。200日線を維持できれば今回の上放れに一定の意味が出るが、再び下回れば上昇シナリオが崩れる可能性があるとみる。上値の目先の抵抗線としては、直近高値の7万2824ドルを挙げた。
ただ、ソンデガード氏は今回のラリーについて、持続的な買いよりもショートポジションの清算に支えられた面が大きいと警戒する。最大のリスクは、新規資金の流入に基づく上昇ではなく、ショートスクイーズ主導の急騰である点だという。強制清算が一巡した後に実需が続かなければ、相場が急速に押し戻される可能性があると指摘した。
Roteckのリサーチャー、アダム・マッカーシー氏は、19日の上昇分の半分以上が1時間以内に生じたと分析した。米財務省によるバイバック拡大が市場の見直しを促した一方、次の上昇局面にはショート清算ではなく現物需要の裏付けが欠かせないと述べた。加えて、30年物米国債利回りが再び5.3%近辺に上昇するかどうかや、暗号資産市場の資金調達率が実際のロングプレミアムを示しているかも確認すべき指標に挙げた。
より強気の見方もある。Bitwiseのリサーチアナリスト、イシュマエル・アサド氏は、今回の急騰をビットコインの底入れを示す最も強いシグナルだと評価した。材料として、米財務省による国債バイバック拡大、米証券取引委員会(SEC)の規制枠組み提案、今週予定されるホワイトハウスの暗号資産サミットを挙げた。ただ、現在のペースのまま上昇が続く可能性は低く、今後数カ月は追加材料を見極めながら、横ばいないし緩やかな上昇にとどまる公算が大きいとみている。次の注目日程としては、9月にクラリティ法案の上院採決が行われる可能性を挙げた。
CoinSharesのリサーチ責任者、ジェームズ・バターフィル氏も、追い風となる環境は続き得るとしながらも、ビットコインはすぐに明確な上昇トレンドに移るというより、当面はレンジ相場となる可能性が高いとの見方を示した。足元のラリーは暗号資産固有の材料というより、マクロ環境の変化による影響が大きいと分析する。最近の物価・雇用指標を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)の追加引き締め観測は後退し、大口保有者も売りを止めて再び買い集めに動いているものの、その規模は持続的な上放れを支えるほどではないという。
こうした中、市場では8万ドルが次の重要な節目として意識されている。バターフィル氏は8万ドル台を上値の重要な節目と位置付け、明確に突破するには、FRBの政策リスクが追加引き締め方向から遠のいていることをよりはっきり確認する必要があると述べた。今回の反発が続くかどうかは、ETFへの資金流入が継続するか、大口投資家の買い集めが広がるか、そして米国債利回りや金融政策環境が再び相場の重荷とならないかに左右される。