人工知能(AI)半導体の供給制約が、高帯域幅メモリー(HBM)や基板にとどまらず、シリコンウェハーにまで広がっている。これに伴い、長期供給契約(LTA)の期間も従来の3〜5年から最長10年へと長期化している。量産向けの増産投資が鈍い一方、先端パッケージの拡大でウェハー消費量が増えており、韓国メモリー各社も5年超の長期固定契約や増産連動型契約へと調達戦略を見直しつつある。
Micronは先月、GlobalWafersに5億ドル(約750億円)規模の戦略投資を行い、米テキサス州シャーマン工場における300ミリシリコンウェハーの生産能力増強を支援すると発表した。両社はあわせて10年間のLTAも締結した。
GlobalWafersにとって、今回の契約は過去最長となる。業界では、供給安定化と量産体制の高度化を見据えた取引と受け止められている。
供給余力はすでに逼迫している。GlobalWafersのシュー・シュラン会長は直近の決算説明会で、12インチ先端プロセスラインがほぼフル稼働の状態にあり、AIや高性能コンピューティング(HPC)、先端パッケージ向けの特殊ウェハーの供給がタイトになっていると説明した。
LTAの対象外となる数量については、供給不足とコスト上昇を背景に、下期から追加値上げが避けられないとの見方も示した。
契約期間の長期化自体が、供給数量を確保する手段になっている格好だ。業界によると、12インチのプライムウェハーは、調達量の相当部分を3〜5年単位のLTAで固定するのが一般的だった。Micronの10年契約は、この水準を大きく上回る。
韓国メモリー各社の調達戦略にも変化が出ている。業界では、Micronの先行を受け、韓国メモリー各社でもウェハーメーカーとの5年超の長期固定契約や、増産連動型契約の比率を高める動きが広がっているという。
増産連動型契約は、需要側が一定の数量を約束することで、供給側が生産ラインの増設判断を前倒ししやすくする仕組みだ。単にウェハーを購入する契約から、供給側の生産能力そのものをあらかじめ押さえる契約へと性格が変わりつつある。
もっとも、契約期間が長いほど需要側は数量と価格を安定的に確保できる半面、需要が失速した場合には、約定数量を引き取り続ける負担も生じる。
契約条件も細分化が進む。台湾メディアによると、足元のLTA交渉では、サプライチェーンのレジリエンスや地政学リスクを踏まえ、特定の国や工場で生産したウェハーの納入を明記する条項が増えている。数量や価格だけでなく、生産地まで契約書に織り込む流れだ。
契約期間の長期化が進む背景には、ウェハー供給が短期間では増えにくい事情がある。キウム証券は、300ミリウェハーについて、市場全体の増産余地が限られる一方で価格は上昇しやすく、半導体メーカーにとって需給確保を迫る重要なボトルネックとして浮上していると分析した。
世界のウェハー市場は上位5社による寡占構造にあり、顧客認証の高さや巨額の設備投資負担が新規参入の壁になっている。
一方で、消費量は急速に増えている。AIアクセラレーターの生産では、HBMダイの積層や大型インターポーザーの採用が不可欠となっており、300ミリのプライムウェハーは面積当たりの消費量が前世代比で数倍に増えた。
先端パッケージの空間効率を高めるため、310ミリ×310ミリの角型ウェハーの開発・評価も進んでいる。
長期契約が増えるほど、未契約分の需給はむしろ引き締まる。GlobalWafersは、LTA対象外の数量について下期の値上げを予告している。
HBM4や300層超のNANDフラッシュのように、ウェハー品質への要求が高い製品ほど、調達条件の悪化がコストや納期に与える影響は大きくなりそうだ。
さらに、ウェハーの先行確保競争はメモリーの歩留まりとも密接に結び付く。量産を控えるHBM4やNANDでは、ウェハーが不規則に反る「ワーピージ」現象に伴う歩留まり低下が継続的な課題になっている。
ハンファ投資証券は、このためメモリー各社のHBM4歩留まりは前世代のHBM3Eに比べて相当低い水準にあると分析した。業界関係者は「メモリー各社が先行確保したウェハーを、どこまでロスなく製品化できるかが、今後の調達戦略と直結する」と話している。