Bitwiseのマット・ホーガン最高投資責任者(CIO)は、暗号資産市場を巡る投資家の見方には大きく3つの誤解があると指摘した。資産トークン化とAIエージェントの広がりによって、市場規模や競争構図、取引量の前提そのものが変わる可能性があるという。
20日(現地時間)、ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、ホーガン氏は定期メモで、暗号資産市場に対する投資家の認識が実際の成長余地に追いついていないとの見方を示した。
ホーガン氏が最大の誤解として挙げたのは、暗号資産プラットフォームの潜在市場を現在の暗号資産市場の規模だけで捉える見方だ。Uniswap、Hyperliquid、Aave、Chainlinkなどの主要プロジェクトについて、ビットコインやイーサリアムなど暗号資産の売買や関連機能に限定されたプラットフォームではないとした。
将来的に株式や債券、不動産などの伝統資産がブロックチェーン上でトークン化されれば、こうしたプラットフォームが対象とする市場は大きく広がると説明した。
同氏は、約2兆ドル規模の現在の暗号資産市場だけを前提にプラットフォームの価値を評価すれば、成長余地を見誤る恐れがあると指摘した。資産トークン化が本格化した場合、Uniswapの潜在的な事業機会は現在の約100倍に拡大する可能性があると主張した。
この点について同氏は、暗号資産プラットフォームを現在扱っている資産だけで評価するのは、Amazonを書籍小売企業としてのみ評価するようなものだと例えた。
トークン化可能な資産の範囲が広いこと自体は広く認識されている一方で、プラットフォーム企業の価値やトークン価格には、その可能性が十分織り込まれていないとの見方も示した。
2つ目の誤解として挙げたのは、大手の伝統金融企業が暗号資産市場に参入すれば、既存の暗号資産企業を容易に圧倒するという見方だ。伝統金融には資本力やブランド力、顧客基盤といった強みがある一方、暗号資産ネイティブ企業も迅速なプロダクト開発力と業界特化の知見を武器に競争力を維持しているとした。
具体例として、ステーブルコイン市場を挙げた。PayPalは独自のステーブルコイン事業を立ち上げたが、市場シェアの大半は依然としてTetherとCircleが握っており、PayPalのシェアは約1%にとどまると説明した。暗号資産企業がすでにユーザー基盤と信頼を築いている点も競争力につながっていると分析した。
もっとも、伝統金融が常に劣勢になるという意味ではないとも述べた。BlackRockはビットコイン現物ETF市場で最大規模の商品を運用しており、強い競争力を示しているという。
今後の競争は、伝統金融か暗号資産企業のどちらかが市場全体を独占する構図ではなく、商品や領域ごとに勝者が分かれる可能性が高いとみている。
3つ目の誤解は、ブロックチェーン上の取引活動が今後どの程度の速度で増えるかを過小評価している点だ。現在の取引件数や決済額だけでは、ブロックチェーンインフラの価値を十分に測れないとした。
株式などの伝統金融資産がトークン化されれば、取引市場は実質的に24時間稼働し得るためだ。既存市場より長時間の売買が可能になり、取引活動そのものが自然に増えると説明した。
さらに、AIエージェントが取引に直接参加すれば、増加幅は一段と大きくなるとの見通しも示した。取引時間の拡大とAIエージェントの参入が重なれば、株式の取引件数は容易に10倍まで増える可能性があるとした。
加えて、将来的には取引量が50〜100倍に拡大する可能性もあると主張した。決済分野でも、AIエージェントの参加によって取引需要が増える可能性があると付け加えた。
ホーガン氏の主張の核心は、暗号資産市場の変化のスピードに対し、投資家の認識が追いついていないという点にある。現在は暗号資産そのものの市場規模を軸にプロジェクト価値を評価しがちだが、今後の成長領域は株式、債券、不動産などにも広がり得るとした。
同時に、伝統金融の参入が直ちに暗号資産ネイティブ企業の競争力低下を意味するわけではないとも指摘した。迅速な開発力と既存ユーザー基盤を背景に、暗号資産企業が特定分野で優位を維持する可能性があるという。
取引や決済にAIエージェントが加われば、ブロックチェーンネットワーク上のアクティビティは現在とは比較にならない水準まで膨らむ可能性があるとの見方も示した。
同氏が挙げた3つの誤解はいずれも、現在の暗号資産市場の規模だけで将来を判断すべきではないという点に収れんする。資産トークン化とAIエージェントの普及が進めば、暗号資産市場はデジタル資産の売買にとどまらず、伝統金融や実物資産、決済までを結ぶインフラ市場へと拡大し得るとみている。