中国の自動車メーカーが、米国の高関税を避けながら東南アジアや中南米で事業を拡大している。輸出に加えて現地生産も広げており、海外市場での存在感を強める中国勢に対し、米日メーカーは販売基盤の維持とEV競争力の強化という二重の課題に直面している。
電気自動車専門メディアのCleanTechnicaは19日(現地時間)、中国メーカーは米国市場への参入に固執するのではなく、成長余地の大きい市場で輸出と現地生産を増やしていると報じた。EV対応で出遅れた既存メーカーが海外の販売基盤まで失えば、中長期的な競争力の低下につながる可能性があるとの見方も示した。
中国製EVの海外展開は統計にも表れている。国際エネルギー機関(IEA)によると、中国のEV輸出は2025年に250万台を超え、前年の2倍に達した。
東南アジアのEV輸入も30万台を超え、前年の2倍以上に増加した。この大半を中国製が占めた。中国製EVの海外販売は東南アジアで130%、中南米で55%それぞれ伸びた。今年上半期の中国の自動車輸出は前年同期比65%増、EV輸出は120%超の増加だった。
CleanTechnicaは、こうした動きがトヨタ、Ford、GM、Stellantisといった既存大手への圧力になり得るとみている。価格競争力の高い中国製EVへ需要が移れば、各社がこれまで収益を支えてきたエンジン車の販売と規模の経済が同時に揺らぐ可能性があるためだ。
とりわけ国内市場の人口減少が進む日本の自動車産業では、海外市場での競争力維持が一段と重要になると指摘した。
FordはEV戦略を見直す事例として挙げられた。昨年、FordはF-150 Lightningの生産終了を決めたほか、大型電動ピックアップや米欧向け電動商用バンなど3つの計画を取りやめた。
EV事業の再編に伴う特別計上額は約195億ドルに上るという。一方で、EV事業そのものを断念したわけではなく、低価格のユニバーサルEVプラットフォームやハイブリッド車に重点を移すなど、投資配分を見直している。
日本市場でも中国勢は存在感を強め始めている。BYDは7月、日本の軽自動車規格に合わせて開発したEV「RACCO」を発売した。
これに対し、日本メーカーも対応を進める。マツダ6eは、マツダと長安汽車が共同開発し、中国の長安マツダ合弁会社が生産して欧州などに輸出するEVだ。単なるバッジ変更ではなく、中国の電動化技術と日本ブランドの設計・走行ノウハウを組み合わせた協業モデルに近いと位置付けられている。
焦点は、中国車が米国市場に参入できるかどうかだけではない。中国勢はすでに東南アジアや中南米でEV市場を先行して開拓しており、その動きは世界の自動車市場に影響を及ぼし始めている。
その結果、米日メーカーにとっては従来の輸出市場を守る重要性が一段と高まった。同時に、EVの競争力を引き上げることも避けて通れない課題となっている。今後の勢力図は、この二つの対応を各社がどこまで進められるかに左右されそうだ。