身体活動は量だけでなく、目的や環境によって認知症リスクへの影響が異なる可能性がある。写真=Shutterstock

余暇に行う身体活動は認知症リスクの低下と関連する一方、職業上の身体活動はリスク上昇と結び付く可能性がある――。こうした結果が、米国Southern California大学の研究チームが主導した国際共同研究で示された。研究では、身体活動は量だけでなく、どのような目的や環境で行われるかも認知症リスクに影響し得ると指摘している。

Medical News Todayが8月19日付で報じた。研究チームは、30カ国で計420万人超を対象とした74件の研究を分析した。参加者の年齢は追跡開始時点で45~93歳、追跡期間の中央値は10年。追跡期間中に確認された全認知症、アルツハイマー病、血管性認知症の診断を検討対象とした。

分析の結果、活動の種類によって傾向は分かれた。余暇の身体活動を行っていた人は、活動量が最も少ない人に比べて認知症リスクが24%低かった。一方、職業上の身体活動では、認知症リスクが20%高かった。なお、職業上の身体活動のデータは就業中の人に限って集計した。

研究に関与していない神経内科専門医のスティーブン・アルダーは、400万人超を長期間追跡した大規模分析として意義は大きいと評価した。そのうえで、観察研究である以上、確認された関連がそのまま因果関係を示すわけではないと注意を促した。職業上の身体活動が認知症を引き起こす、あるいは余暇の運動が直接的に認知症を防ぐと断定することはできないとしている。

余暇の運動が有利に働く背景としては、心血管機能の改善や血流の増加が挙げられる。アルダーは、定期的な運動が血圧や血糖、コレステロールの管理に役立ち、神経細胞同士の健全な結び付きの維持にも寄与し得ると説明した。

加えて、活動を自ら選べることや、楽しみながら取り組めることも重要な要素だという。自発的な活動は、社会的な交流や精神的な刺激を同時にもたらす可能性があり、こうした要素がストレスや社会的孤立の軽減を通じて、脳の回復力を高める可能性があるとしている。

一方、身体的負荷の高い仕事と認知症リスク上昇の関連については、労働環境全体の中で捉える必要がある。研究チームによると、年齢や教育水準、慢性疾患を補正した分析でも、職業上の身体活動は認知症リスクの増加と一貫して関連していた。

ただ、その背景は単純な「運動量の多さ」ではなく、職場環境にある可能性が高いという。心理社会的ストレスに加え、有害な職場環境、大気汚染や騒音への曝露などが複合的に作用している可能性があるとしている。

アルダーは、身体的に厳しい職業では、立ち仕事や荷物の運搬といった同じ動作を長時間続けるケースが多く、作業の速度や強度を自分で調整しにくいと指摘した。十分な回復時間を取りにくいうえ、交代勤務や騒音、大気汚染といった別の職場要因が重なることもあり得ると述べた。

さらに、過酷な労働の後には、余暇の運動や社会活動、健康的な加齢に資する他の行動に充てる時間やエネルギーが失われやすいとも付け加えた。

筆頭著者のネイサン・ペターは、今回の結果は慎重に解釈する必要があると強調した。分析で十分に捉え切れていない要因が結果に影響した可能性は否定できず、とりわけ身体的負荷の高い仕事は、さまざまな社会的・環境的要因と複雑に絡み合っている場合が多いと説明している。

研究チームは、認知症予防に向けた運動の推奨も見直しが必要だとみている。単に「もっと体を動かす」と促すのではなく、誰もが安全で、楽しく、自分で選べる身体活動にアクセスできる環境を整えるべきだと提言した。

今回の研究は、脳の健康にとって重要なのは運動量だけではなく、どのような状況で身体活動を行うかという点である可能性を示している。認知症予防は定期的な運動だけで決まるものではなく、心血管の健康、睡眠、社会的・知的活動、そのほかの修正可能なリスク要因を含めて総合的に管理する必要があることも改めて示された。

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