中国の研究チームが、米軍のF-22およびF-35ステルス戦闘機を赤外線の熱信号から識別する軽量AIシステムを開発したと主張した。実験室環境では識別精度が90%を超えたとしているが、実機を使った検証は行われておらず、実戦での有効性はなお不透明だ。
TechRadarが17日付で報じたところによると、この研究の特徴は、レーダー反射断面積(RCS)ではなく、飛行中に生じる赤外線の熱信号をAIで解析する点にある。
F-22とF-35は、レーダーや各種センサーによる探知を受けにくくするよう設計された代表的なステルス戦闘機だ。ただ、エンジンや排気口、機体表面から発生する熱そのものを完全に消すことはできない。研究チームは、こうした熱パターンの違いをAIに学習させることで、ステルス機と他の目標を識別できるとしている。
研究では、戦闘機とフレアの判別も想定した。フレアは赤外線誘導ミサイルを妨害するために使われる代表的なデコイで、航空機とは異なる熱特性を持つ。研究チームは、AIによって両者を見分けられると説明している。
研究を主導したアン・ジャンサンは、この軽量モデルについて、高い処理速度と識別性能を両立でき、将来的には空対空ミサイルへの搭載も視野に入ると主張する。ミサイルは搭載スペースや演算資源に制約があるため、大規模で複雑なAIよりも、軽量なモデルの方が兵器システムに組み込みやすいという。
もっとも、今回の結果から直ちに実際のステルス機探知能力を論じることはできない。研究チームが試験に用いたのは実機のF-22やF-35ではなく、両機の熱特性を反映したシミュレーション標的だったためだ。実験室では90%超の識別精度を示したものの、実機を対象とした運用試験は確認されていない。
実際の空中戦では、熱信号に影響する変数はさらに増える。戦闘機の熱信号は速度や高度、機動状態によって変化するほか、観測角度や大気の状態、周辺温度にも左右される。電子戦や各種デコイが加われば、実験室で得た精度をそのまま維持できるとは限らない。
それでも今回の研究は、ステルス技術を巡る競争がレーダー回避だけにとどまらない可能性を示している。赤外線探知技術とAIを組み合わせることで、エンジンや排気口、機体表面から放射される熱の分析能力が高まる余地があるためだ。
AIプロセッサの小型化が進めば、演算資源が限られるミサイルにも、機械学習ベースの探知技術を搭載できる可能性は広がる。今後はステルス戦闘機の設計においても、RCSの低減だけでなく、熱信号をどこまで効果的に管理できるかが重要な要素になり得る。
今回の研究は、F-22やF-35のステルス性能が無力化されたことを意味するものではない。実機による検証が行われていないためだ。一方で、赤外線信号をAIで高速解析する技術の進展によって、ステルス機の生存性を左右する要素が、レーダー低被探知性に加えて熱信号管理へと広がる可能性を示した点は注目される。