Qualcommが、Snapdragonの適用領域をスマートフォンからウェアラブルへ広げている。先月開催された「Galaxy Unpacked 2026」では、スマートフォン向けの「Snapdragon 8 Elite Gen 5 Mobile Platform for Galaxy」に加え、スマートウォッチ向けの「Snapdragon Wear Elite Platform」、アイウェア向けの「Snapdragon AR1 Gen 1」を披露した。スマートフォン、スマートウォッチ、インテリジェントアイウェアをまたぐ構成により、同社が掲げる「Ecosystem of You」戦略がGalaxy製品群で具体化しつつある。
Qualcommは、パーソナルAIを「日常の中で常に寄り添い、見て、聞いて、行動する存在」と位置付ける。世界ではSnapdragonベースのデバイスが35億台超使われており、消費者の61%はSnapdragonをプレミアムAndroid体験を支える中核要素と評価したという。
Qualcomm Technologiesの上級副社長、ジアド・アスガー氏は2月、同社のブログで「パーソナルAIの台頭は、ユーザーと共に動き、ユーザーから学び、ユーザーのために働く技術の新時代を意味する」と述べた。これに合わせ同社は、XR、ウェアラブル、パーソナルAIの各事業部をアスガー氏の傘下に統合・再編している。
戦略の中核にあるのが、「インテリジェント・ウェアラブル」という新たなデバイスカテゴリーだ。時計、イヤーバッド、リング、眼鏡、ペンダントといった装着型機器にエージェント型AIを載せ、各機器が連携しながらユーザーのニーズをリアルタイムで学習し、対応する構想を描く。Qualcommは、こうした接続体験全体を「Ecosystem of You」と定義している。
◆拡大を支えるのはチップ設計
この展開を支えるのが、Snapdragonのチップ設計だ。Qualcommによると、SnapdragonはCPU、GPU、専用AIエンジンを組み合わせた構成を採用し、電力効率を高めながらオンデバイスAI処理を実行する。低消費電力アーキテクチャと小型・高性能設計により、バッテリー容量や実装スペースに制約のあるウェアラブルでもAI機能を搭載しやすいという。スマートフォン向けの単一プラットフォームにとどまらず、同じ技術基盤をXR、ウェアラブル、オーディオ向けへ展開できる点を、同社は戦略の土台に据える。
Galaxy Unpacked 2026で示された3つのプラットフォームは、その方向性を端的に表している。Galaxy向けのSnapdragon 8 Elite Gen 5は、「Qualcomm Oryon CPU」を基盤に性能と電力効率を両立し、エコシステムの中核となるスマートフォンを担う。Galaxy Watch9とGalaxy Watch Ultra2に採用されたSnapdragon Wear Eliteは、センサー融合を通じて多様な信号を収集し、ユーザーの状況や文脈を把握するAIを支える。Snapdragon AR1 Gen 1は、インテリジェントアイウェアにおける視覚ベースのAI体験を支援する。
◆アスガー上級副社長「ユーザーと共に動き、学ぶ技術」
Qualcommは、既存のフォームファクターを超える取り組みも公開した。SnapdragonベースのAIネイティブ無線ヘッドセット「Project Motoko」は、コンピュータビジョン、インテリジェントなオーディオ検知、リアルタイムAIインタラクションを組み合わせ、ヘッドホンを常時稼働するAIへ発展させることを狙う。ウェアラブル「Project Maxwell」は、高性能AI処理と接続性を組み合わせ、MotorolaのパーソナルAIエージェント「Qira」を支援する予定としている。
今回のGalaxy Unpacked 2026と新プロジェクトに共通するのは、スマートフォンで培ってきたSnapdragonのオンデバイスAIを、時計や眼鏡、イヤーバッドなど人を取り巻くデバイス全体へ広げようとしている点だ。AI時代のモバイル競争が、個別機器の性能だけでなく、機器間の連携やユーザー体験の完成度へ軸足を移す中、Qualcommはウェアラブルを含むAIエコシステムの構築を加速している。