韓国の通信大手3社が、AIトランスフォーメーション(AX)を担う人材の育成を本格化している。通信事業にとどまらず、データセンターなどのAIインフラやソリューション領域へ事業を広げる中、AIを現場に実装し、運用まで担える実務人材の確保が重要課題となっている。
業界によると、3社はAIインフラを軸に法人向け(B2B)事業を拡大している。AIモデルやデータ、クラウド基盤への理解を持ち、サービス化につなげられる人材の不足が課題として浮上している。
通信業界では、AIインフラへの投資だけでは事業転換を加速しにくいとの見方が強い。大規模なコンピューティング資源を確保しても、サービス設計や導入・運用を担う人材が不足すれば、収益化が遅れる可能性があるためだ。
各社は、産業現場でAIを活用できる人材の育成に軸足を置く。AIの知見とデータ活用を結び付け、サービスや業務プロセスの変革につなげる人材の裾野を広げる考えだ。
◆SKT、ハッカソンと実務型教育で人材発掘
SKTは、若年層がAIを使って実際の課題解決に取り組むプロジェクト型プログラムを拡充している。直近ではHana Financial Groupと共同で「TECH4GOODハッカソン」を開催した。
若年層向けAI教育プログラム「FLY AIチャレンジャー」と、Hana Financial Groupの若手人材育成プログラムの参加者が集まり、AIサービスや金融・通信融合サービスの開発に取り組む内容だ。SKTの現場開発者もメンターとして参加し、技術面の助言や実務経験の共有を行った。
セキュリティやネットワークといった通信事業者の既存専門領域に、AIを組み合わせた教育も強化している。Korea IT Academyと雇用労働省のK-ニューディールアカデミー事業の一環として、AIセキュリティ・ネットワーク実務人材育成課程「ALEPH」を運営している。
受講生は、AIベースのネットワーク運用、セキュリティポリシー設計、企業インフラ構築、異常兆候の分析や侵害対応など、実際の企業環境に近い課題に取り組む。SKTは現場事例や社員によるメンタリングをカリキュラムに反映し、ネットワークやセキュリティ業務にAIを実装できる人材の育成を進める方針だ。
キム・グヨンSKTエンタープライズ事業本部長は「AIが企業の中核領域へ広がる中、実業務に適用し、運用まで担える能力の重要性が高まっている」と述べた。
◆KT、840時間の長期教育から社内キャンプまで展開
KTは、社外の若年層向け教育、地域密着型プログラム、社内の従業員教育を並行して進め、AX人材の育成体制を多層化している。
主力プログラムは、雇用労働省と運営する「KTエイブルスクール」だ。2021年の初回開講以降、約3500人の修了生を輩出した。修了生は約500社に就職し、AI開発やデータ分析に加え、営業、マーケティング、企画など幅広い職種でデジタルトランスフォーメーション業務を担っている。
来月始まる第10期の受講生は、計840時間の理論・実習教育を受けた後、プロジェクトにも取り組む。
KTは全国5地域で「KT K-ニューディールアカデミー」も運営する。教育課程の半分以上を現役の実務担当者が担い、プロジェクト、グループ会社見学、職務体験などを提供している。
首都圏以外の若年層も居住地近くで同水準の教育を受けられるようにし、地域間の教育格差の解消にもつなげたい考えだ。
社外人材の育成に加え、社内のAI実行力強化にも乗り出している。先月中旬にはPalantirと共同で社内AIハッカソン「エージェントキャンプ」を開催した。Palantirを基盤とするB2B事業の実行力向上を狙った取り組みだ。
ネットワークセキュリティ監視、エネルギー運用の最適化、データ構築など、実業務に適用可能なAIエージェントを発掘し、現場実装につなげることを目標に掲げる。
KT関係者は「顧客現場で課題解決に当たる前方配置エンジニア(FDE)の能力を強化し、B2B AX事業の実行力を高めていく」と説明した。
◆LG Uplus、AI活用の定着で社内変革を加速
LG Uplusは、AIスキルを持つ専門人材の確保と並行し、既存社員がAIを業務で直接活用する社内AXの浸透に力を入れている。開発職に限らず、全職種でAI活用を進めることが業務変革につながるとの判断だ。
同社は5月、Microsoft Copilotを全社標準の業務ツールとして導入し、社員向け活用教育を実施した。導入から約1カ月で社員利用率は80%を超え、累計プロンプト数は44万件に達した。利用者全体のうち約63%が、1日1回以上AIを活用したという。
社内業務データとAIを連携し、報告書作成やデータ分類にも活用している。一部のデータ分類業務にAIを適用した結果、作業時間は約90%短縮した。
今後は、バイブコーディングやサービス企画、コンテンツ制作など、職種別のAIツール支援も拡大する計画だ。
通信業界関係者は「AXが通信業界の主要テーマとして浮上し、技術力と実務能力を併せ持つ人材への需要が拡大している」とした上で、「AIインフラ投資を実サービスと収益に結び付けるには、現場で使いこなせる人材を継続的に確保する必要がある」と指摘した。