量子計算の実行能力に加え、結果の検証可能性も示した今回の研究。画像=Reve AI

IBMと米シカゴ大学の研究チームは、論理量子ビット70個を用い、古典計算機では扱いが難しい量子計算を、結果の検証まで可能な形で実行したと発表した。量子計算の性能だけでなく、計算結果の信頼性も示した点で、誤り耐性量子計算に向けた重要な前進といえる。

ブロックチェーン系メディアのCoinpostが現地時間7月31日に報じた。研究チームは新たな誤り訂正手法を適用し、量子計算を約15分で完了したという。

今回の成果のポイントは、大規模な量子計算を実行したことにとどまらず、その結果を検証する手法まで示した点にある。量子優位は一般に、量子コンピュータが古典計算機を上回る計算能力を示す概念だが、計算結果の正確性をどう確かめるかは大きな技術課題とされてきた。

研究チームは、従来の性能評価手法である「ランダム回路サンプリング」(Random Circuit Sampling)を改良した新たな検証手法を採用した。この手法は、計算中の誤りを検出しながら、古典計算機が模倣しにくい計算複雑性を維持できるよう設計したとしている。

実験では、誤り訂正機能を備えた論理量子ビットを使用した。論理量子ビットは複数の物理量子ビットを束ねて誤りを補正する技術で、外部環境の影響を受けやすい物理量子ビットに比べ、より高い計算安定性を持つ。

研究チームは今回、2量子ビットの論理演算を2415回、論理Tゲート演算を468回実行した。Tゲートは複雑な量子アルゴリズムの実装に欠かせない中核演算とされる。論理誤り率は、物理誤り率のおよそ10分の1まで低減したという。

シカゴ大学のビル・ペパーマン准教授は、「量子優位を実証するうえで最も難しい課題の一つが、結果の検証だった」と述べ、今回の研究の意義を説明した。

同大学のスミク・ゴシは、検証技術の進展が次世代の誤り耐性量子コンピュータの実用化を早める可能性があると評価した。IBM Researchのジェイ・ガンベッタ氏も、「量子優位の時代に一歩近づいた」と強調した。

一方、今回の研究成果が直ちに暗号資産の安全性を脅かす水準に達したわけではないとの見方もある。ビットコインは楕円曲線暗号に基づく公開鍵暗号方式を採用しており、十分な性能を持つ誤り耐性量子コンピュータが実現すれば解読される可能性があるとの指摘が続いてきた。

ただ、Google Quantum AIが3月に公表した研究では、ビットコインの暗号解読には誤り耐性を備えた論理量子ビットが約1200〜1500個必要と分析している。今回用いた論理量子ビットは70個で、実際の暗号体系を脅かす段階とはなお大きな隔たりがある。

そのため、今回の成果はビットコインやイーサリアムの暗号方式に直ちに影響する話というより、誤り訂正を基盤とする量子コンピューティングが、実際の計算と結果検証の段階に入りつつあることを示す節目と受け止められている。計算結果を検証できる技術は、将来の大規模な誤り耐性量子コンピュータの開発に向けた基盤技術となる。

IBMはロードマップで、2029年までに大規模な誤り耐性量子コンピュータを実現する目標を掲げている。約200個の論理量子ビットを備え、1億回規模の量子演算を処理できるシステムの開発を進めているという。

今後は、論理量子ビット数の拡大と誤り率の改善がIBMの開発計画に沿って進むかどうかが焦点となる。検証可能な量子計算技術が商用化に向けてどこまで加速するかも注目されそうだ。

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