SK hynixは7月29日の決算説明会で、2026年の投資規模を40兆ウォン台後半と示した。四半期ベースで過去最高業績を更新したものの、市場では今後の償却負担の増加や供給過剰への懸念、長期供給契約(LTA)の条件、株主還元策の未定が警戒され、同日の株価は急落した。
同社は説明会で、需要への対応力を確保するため投資を拡大していると説明した。M15Xの量産時期を前倒しするほか、2027年初めに龍仁第1期工場のクリーンルームが稼働した後、速やかに生産能力を引き上げられるよう準備を進めているとした。先端パッケージング工場「P&T7」、新たなNANDフラッシュ生産拠点「M17」、国内の新規半導体クラスター造成計画にも言及した。
一方で、工場建設や装置搬入、生産能力の拡張については、顧客需要の確度と投資効率を見極めながら段階的に進める方針を示した。大規模投資の継続に伴い供給過剰を懸念する見方も出たが、同社は需要を確認しながら柔軟に能力を増強するため、中長期の投資拡大が直ちに供給過剰につながる可能性は限定的だと説明した。すでに公表した計画以外に、新たに決定した生産インフラ投資はないとも述べた。
生産拠点の配置については、国内外を単純に切り分けるのではなく、電力や用水、人材、サプライチェーン、半導体エコシステム、顧客への近接性を総合的に勘案して最適化する方針を示した。国内では、利川と龍仁を次世代DRAMとAIメモリの拠点に、清州をNANDフラッシュと先端パッケージングを担う拠点に位置付ける考えを明らかにした。
市場が注視したもう一つの論点がLTAだ。同社は主要顧客を含む10社余りとのLTA交渉を終えており、契約期間は通常5年が基本だと説明した。LTAは市況悪化局面では業績の下支え要因となる一方、DRAMの平均販売価格(ASP)が四半期で30%、NANDフラッシュASPが50%台半ば上昇するような局面では、収益の上振れ余地を抑える条件にもなり得る。もっとも、LTAが総販売に占める比率は開示せず、適正水準で運用していくとの説明にとどめた。
需要動向では、PCとモバイル向けでメモリ確保が難しくなり、一時的な販売調整が生じていると説明した。価格上昇が最終需要を押し下げているとの認識を示した形だ。その上で、供給不足が緩和しAIサービスの拡大が進めば、成長モメンタムは回復すると見込む一方、回復時期は供給制約の解消タイミングに左右されるとした。
2Q(第2四半期)のDRAM ASPの上昇幅が市場期待に届かなかったとの指摘に対しては、一部の高付加価値製品で出荷拡大の時期が下期にずれ込み、製品ミックスの影響でASP全体の伸びが抑えられたと説明した。下期にはHBM4の出荷拡大に加え、1cナノベースの汎用DRAMの出荷増が見込まれ、この影響は和らぐとした。
今回示された投資計画を巡っては、将来の収益構造への影響も意識されている。2Qの営業利益率76%を支えた要因の一つとして、減価償却費と無形資産償却費の合計が4兆ウォンにとどまった点が挙げられており、今後投資拡大分が償却費として反映される局面では、同水準の利益率を維持しにくくなるとの見方が出ている。ASPが下落に転じるタイミングと償却負担の増加が重なれば、マージン縮小が加速する可能性もある。
LTAも同様に、下落局面では収益の下支えとなる一方、5年契約が基本である以上、市況が再び上向く局面では上値を抑える要因になり得る。契約比率が開示されていないため、その効果と制約の大きさを市場が見極めにくい点も不透明要因として残る。PC・モバイル向けの販売調整が長引いた場合、AI需要がどこまでその空白を補えるかも読みづらい。
株主還元策がなお固まっていないことも、投資家心理の重荷となった。同社は資本配分の基本方針として、将来投資の適時執行、安定的な財務構造の維持、株主価値向上に向けた還元のバランスを挙げたが、具体策は未定のままだ。2Q末時点の現金性資産は88兆ウォン、純現金は69兆4000億ウォンだった。
追加の株主還元策については多角的に検討しているとしながらも、方式、規模、時期はいずれも決まっていないと説明した。米国預託証券(ADR)の公募に伴う規制や手続き上の制約から、公募過程で開示していない情報を現時点で明らかにしにくいことを理由に挙げた。具体策が固まり次第、年内に市場と共有する方針としている。
こうした懸念材料が重なり、株価は業績とは逆方向に動いた。7月29日の韓国取引所の有価証券市場で、SK hynix株は前日比27万ウォン(17.42%)安の128万ウォンで取引された。前日終値は155万ウォン、出来高は758万9882株だった。最高業績の発表当日に2桁の下落率となり、業績そのものよりも、株主還元策の具体性や2027年以降の費用構造に対する会社説明の乏しさが意識されたとの見方が出ている。
ADRを巡る需給面の不透明感も残る。SK hynixは7月7日にNASDAQへADRを上場した。同社によると、原株の韓国取引所上場手続きが完了した翌日の7月30日から、ADRの原株への転換が可能になる。一方、原株をADRへ転換する場合は、規制上の届出手続きに通常数週間以上を要する可能性があり、ADRの転換上限は1779万株に設定されている。転換枠の拡大については未定としている。